おまけ―お仕置き編―
何度言い聞かせても同じことをしてしまうその顔を上から見下ろす。こちらを向く赤い目は、期待の色を浮かべてしまっていて、恒例になっているお仕置きが意味をなさないことを示していた。
「だから、勝手に家から出たらだめって、言ってるよね」
「うん……」
「なんで守れないの」
「ごめん……」
どうにもこの大きな子どもは留守番ということができないらしい。
買い物に行くからとほんの少しの時間1人にさせていただけなのだが。家から出て、向かいに住むお爺さんが庭木を切るための脚立を運ぶのを手伝ったそうだ。ついでに庭の石灯籠をひょいと持ち上げて希望の位置まで動かしたとか。
ご近所さんの力になれたことは喜ばしいのだが、人ならざるものの怪力はどう考えても目立つ。それでなくとも大人の姿だと腰の曲がった爺さんの2倍くらいの背丈なのだ。どうやったって関わった人間の記憶に残ってしまう。
「うちに変なのが住んでるって噂になったら困るんだけど」
「ごめんって……。でもいいじゃん、あの爺さん助かったんだし」
謝りながらもそう口を尖らせる様子に腹が立って、いつものように尻を叩いた。
ぱぁん、と小気味よい音が部屋に響く。
「ひぐっ…」
もう1発。背中を反らして耐えている風だが、膝の上に寝そべった時点からすでに喜んでいるのはわかっている。
いい加減、毎度同じ仕置きも飽きてきたので、もう叩くのはそれだけにして、なめらかな双丘を撫でた。
「ふんんっ……」
手にぴたりと吸い付くような水分の多い肌。虎柄のパンツを脱いだ子どもの姿では肌年齢も若返るのだろうか。大人の姿の時も十分、きめの細かい肌をしているが、年齢独特の瑞々しさはまた別物だ。
打ち付けられて赤みを持ったところをしつこく何往復も撫でると、びく、びく、と都度尻が持ち上がる。
「期待するのが早すぎない?」
つやつやの桃の割れ目を広げると、すでに緩んで口を開いている後孔。空気にさらされると、触ってもらえると思うのか、きゅうと窄まった。
「み、るな……」
「そうだよね、叩かれるのも、この中をいっぱいにされるのも好きだもんね。それって全然お仕置きとは言えないでしょ」
ローテーブルの上に置いてあった赤いリボンを手に取る。お爺さんがお礼にと持たせてくれた菓子折りの箱にかけられていたもの。少し腰を上げさせて、可愛らしく勃ち上がったものの根本をプレゼントのようにちょうちょ結びで縛った。
「な、なんで……」
「今日はちゃんとお仕置きしようね」
先日買ったばかりで、まだたっぷりと中身をたたえたローションを、穴に向かって上からどろりと落とす。怯えて機嫌を伺うようになった目はそれでも潤んでいる。
穴の入り口は表面を一度だけ撫でて、そのまま会陰に指を2本添える。真ん中に頼りなく走る細い線をゆっくりたどると鬼が頭を左右に振った。
「やだっ…そこ、だめっ…」
「なにがだめ?」
「へんっ…へんだからっ……ぅアっ…さわんな…でっ」
人ではない存在なのに、体のつくりは人間と同じ。どうしてそういう仕様なのか、それも神様の意思なのかわからないが、こちらとしては都合は悪くない。
大人の姿の時と違って、それぞれのパーツが小さいので、少し指を前に滑らせただけで袋の付け根に触ってしまう。そこを何度か押さえると、ぶら下がった小さな睾丸がふらりふらりと揺れる。
「あ、あ、やっ……」
後ろに引き返してふくりとした丸みを前後に撫でさする。力を入れれば押されて指の形にへこむその表面を、へこませない程度の力でゆるゆると触るとお尻全体が震えた。
「ここ気持ちいいの?」
「ちがっ、はっ、ぁぁあ……そこばっか、やめ、」
「だめ」
反対側の手も尻に沿える。中指を孔にそっと引っ付けるとちゅうと吸い付いてくる。でもそれ以上は与えない。線を中心に前後に動かしていただけの指を開いて2本で挟むようにして揉む。柔らかいけどぴんと張った皮膚は指の間でつるんと滑るようだ。
「あうう……ふっ、く、あっ」
ぎゅうとスウェットを握られる。形よく伸びた足がちょうどつま先で捉えた床に突っ張る。膝裏がぴんと伸びて、自然とさらに尻が持ち上がっているが自覚はないらしい。孔の入口が指1本をなんとか捉えようと何度も皺を深くする。餌を求める鯉の口みたいに何度も開いたり閉じたり。
「そんなにこの中が寂しいの?」
小さな蟻の門渡りの真ん中をぐいと押し込む。
「ひあぁぁっ!やだっ…や、あ、あ、」
下腹に力が入って凹む様子が太ももに伝わる。かくかくと陰茎をこすり付けるように腰が動いて動物みたいだ。
「ああ、ここ押すと外側から前立腺に届くんだっけ」
「しらなっ…だめ、そ…こぉ…っう、も、ごめ…なさ…ゆるしてぇ……」
ぐ、ぐ、ぐ、とその丸みを刺激する。白い太ももがぶるぶる震えて、口からこぼれた涎がフローリングにぽたりと垂れた。くるくると円を描くように撫でまわしてまた線に沿って陰嚢の付け根まで。まったくじっとしていられない下半身は何度も跳ねすぎて、膝からずり落ちそうになっている。
「ちょっとは反省した?」
膝から下ろしてベッドに四つん這いにさせる。力の入らない腕は上体を支えられず、尻だけが高く上がった。
「はんせ、したっ……したから…も、かってに…でな……から…」
ちらりと見やった幼い顔は涙と涎でぐちゃぐちゃだ。シーツに吸い取られるものの、次々新しい涙が目じりから零れる。
陰茎の根元を飾るリボンを取りたいのだろう、片手が何かを探すように股間のまわりをうろうろする。その手を下ろさせ、シーツを握らせた。
「神様もさ、お仕置きが甘すぎると思うんだよ。二度と勝手なことしたくなくなるぐらいにしようね」
首をこちらに向けて表情をうかがう目に、あ、と口を開け舌を見せてやる。赤い目がころころと不安で揺れた。
しつこく触った会陰の膨らみにちいさく口をつける。頭の方で息をのむ音。自分の舌より小さいそこを、表面で包み込むようにして舐め上げる。
「ぁぁぁ……も、ちがうとこ…して……やだぁ…」
「ちがうところって?ここ?」
結んだ赤いリボンに沿って根本に舌を這わせる。風船から空気が抜けるみたいな間抜けな声があがる。逃げようとずり上がる腰をつかまえ、耐えられないといった様子で左右にそれるそこを舌で追いかける。
それでもまだそれ以上は与えてはやらない。玉羊羹みたいな丸みをもう一度唇で挟んでベロの先でぐりぐりと押し上げると、力の入らない手が何度もシーツをかいた。
「ひっ…ううんっ、も、もう、おねがっ……そこ、じゃなっ…とこ…」
程よい弾力で押し返されるのを舌先で遊ぶ。
それでなくとも出会ったあの日からずっとこちらはペースを乱されっぱなしなのだ。
こつこつと積み上げて来た平穏な生活のためにも、今日という今日は骨の髄まで教え込まなくては。
「俺は神様じゃないから、神様みたいに優しくしてあげられないんだよね」
甲高い声で何度も許してと嬌声を上げるのをなだめながら、声がかすれて半分意識がなくなるぐらいまで、その小さな丸みだけを責め続けた。
コメントを残す