「ダメな七武海だな、こんなことして」
一体どんな顔でそんなことを宣うのか。
だがその表情をまともに見ることはできない。今あの赤銅と目が合ったら出てしまう。女の胎に注ぐことを許されない濁流は、子をなせば乳になる血流がふんだんに巡る乳房に慰められ、尿道から噴いてしまえば喉を通って胃酸に焼かれる。
「ぐっ……う、あ、はな、せっ」
「いつ見ても立派なモンだな、あつい」
「ぁあ、あっ」
乳房と同じ白さの豊かな髪を揺らしてスモーカーは鼻を鳴らした。
「大丈夫だ、比べてないから」
当たり前だ、その辺の粗チンと比べられてたまるか。だがおれでない男が正当にこの女への挿入を認められているのだろうかと想像すると臍の下がなぜだか切なくなって、咥えさせられた女の指を食いしめた。ちがう、そっちじゃないだろう。
笑わない聖母は口と乳房で男根をあやしながら、人の直腸に埋めた長い指でこちらにしか存在しない性感帯を容赦なくいたぶる。視界が、曇る。男のおれより厚みのある舌が亀頭を包んで撫でまわす。
「や、めろ、うっ、でるっ、で、……」
「一丁前に。じゃあこっちは休憩だな」
ずる。ぬめりと共に後孔の指が引きぬかれ、途端に射精感が遠のいてしまう。今にも弾けそうだったのに。幾度かの共寝で躾けられた成果だった。そこだけの刺激では射精できないのに、やわらかな双丘を押し退けて赤い口腔の粘膜が根本までを収めてしまった。食べ物を啜るより汚い音を立てて、嚥下のときぐいと動くところまで亀頭を誘いながら幹を舌で扱かれる。睾丸が張り裂けそうで今にも押し出されそうなのに、蓋をされたように途中でせき止められる。
「ふ、うあっ、あ、ぁああ」
出せないと知っていて、やさしかった胸とは別人のように暴き立てようとする口腔。どうにかしてくれと腰ばかりが格好悪く前後に振れて、泣きそうなほど情けなかった。頬の粘膜に押し付けられた鈴口が口づけするようにはく、はく、と蠢いているのがわかってしまう。尾てい骨が重く痛んで思い切り突き上げたい衝動を必死にこらえた。
「たのっ、たのむから、も、だした…っ、ぁ!あー……」
カップに残ったラテの泡を啜るようにひと際長く吸い込まれ、閉じた瞼に光が散る。びく、びく、と二度震えたおれの腰を撫でて、スモーカーはようやく口を離した。
「だめ、これはおまえの口じゃないから」
膨れた唇の零した台詞に突き落とされ、まとめた三本の指に突き上げられる。安堵のため息は吐き出す間もなく鼻腔に戻り、声にならない淫靡な空気に変わった。
的確に前立腺を撃ち抜かれて喉が不格好な音を立てる。なりを潜めていた射精感がひといきに押し寄せて、陰嚢が引き攣れ、それは止めようもなく道を駆け上がってくる。
だめだと首を振るしかできないおれを真正面から両目で捉えて、スモーカーは鎖骨の中央をとんとんと指した。ここならと許されている。もうその手は幹を支えておらず、それでも勃ちつづけるペニスが的など絞れるはずもない。とっさに自分の手を出したのに、やわくそれを制止され、反対の手で内側から弱いところを抉られながら必死に腰を固定した。
「あっあっ、うー……だっ、でるでっ……るっ、あぁっ」
薄桃色の爪がさっき示した点を凝視して、そこにだけ、粗相をするなと骨盤を叱咤し、あとは中の腫れを押し込む指先に導かれるまま。白い肌を汚す白。乳房にも口の中にもゆるされず、その肌の表面にだけべとりと逐情した。
まだ指も抜かれないまま、反対の手でそれを塗り広げながら、女は見上げた。
「気持ちよかっただろ?」
「……っかった、けどだ」
「ほかの男が私に挿れる想像をしただろう。ここ、とても締まった」
言わないでほしい。涙が零れてしまわないように下を向かないおれの顎を伸びあがって舐め、スモーカーは満足そうにまた尻の中を探った。
「うあ」
「じゃあ続きな。こっちはまだ物足りなさそうだ」
「じゃあその妙な設定をやめろ」
「嫌だね。なかなかに楽しい、不倫ごっこ」
最悪だった。おれですらたまにしか許してもらえないのに。大きくて白くやわらかな、炊き立てご飯の蒸気のような女の体内に、だれかが日常的に入っているのかと想像しただけでぐちゃぐちゃの感情が体の制御を失わせる。これっぽっちも楽しくないのに、女はこれを続けると言っていそいそと服を脱ぎ始めていた。シーツの向こうに、女がつけるにせものの男根。いやだ、本当はおれが挿れたい。それでも手招きされるとのこのこ近寄ってしまって、またいいようにされるのだ。おれの女でないのに。
「そんな顔するなよ、坊ちゃん」
「くそ、その呼び方やめろ」
「おいで、悪い七武海さん」
顔を押し付けられたたっぷりの乳房の先の突起より、女の手が摘まんでいるおれの乳首の方が気持ちいいだなんて。さっきまで埋められていた腹が寂しいと疼くほどには、女の遊戯の。
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