ぶつりと首の太い血管に犬歯を突き立てられる。朝の儀式。
一滴ももらすものかと、血液が流れ出る前にそこを大きな口で覆われる。
じゅうう、と皮膚ごと強い力で吸われると動脈から生命の維持に必要な体液が、それを食糧とする生き物の喉に向かって噴き出した。
兄さんだけの特異な体質。母方の血筋をたどっていくと大昔に同じような体質の者がいたらしい。
頭から血の気が引く。それと引き換えに、吸い付かれたところからじわじわと言いようのない気持ちよさが血管を逆流していく。
は、と短く息を吐いて耐えた。
ごくりごくりと嚥下する喉を眺めると大きな支配感に満たされる。
捕食されているのはこちらだけれど、それは些細なこと。
この美しい銀の髪も長いまつ毛も薄い唇も、艶のある肌も形のいい爪も、絶頂する時吐き出される体液も、全部俺の血液でできていると思うとこの毎朝の儀式はとても神聖だった。
腹を満たすのに必要な量をほぼ飲んだころには、触ってほしそうに尻が左右に揺れ始める。
摂取された分だけこちらも煽られて、出社までの時間を計算しながら服の中に手を入れた。窪みからすでに潤いが垂れていて、準備万端だなとほくそ笑む。
「兄さん」
俺にも食べさせてよ。
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