父宇
「自分がどうにかできるなどというのは、思い上がりだ。」
視界がゆれるほど勢いをつけて何度も奥を抉られる。なにかの仕掛けみたいに、男根が肚を突っつくたびぼろりぼろりと意味をなさない声が落ちた。
「お前もひとつの駒だということを、忘れてはならない。」
父の声が遠くなっていく。目がぐるとまわって意識が途切れる、と思った。
ばつん、と背中が割れるような衝撃で引き戻される。
「まだ寝ていいとは言っていない。」
また派手な跡がついてしまったと思うがそれを確かめる間もなく、また内臓を揺らされる。何度か出されたものが中で泡立って音を立てる。
口が開きっぱなしで息と唾液がこぼれ続けている。水がほしい。
「なんだ苛立っているのか。」
この人には機微を感じ取られてしまう。
父はおもしろそうに最奥で一度止まって、少し角度を変えた。ぷちゅ、とその先を閉ざしている硬い口が吸い付くのがわかる。ああ、今日はそこに入る気か。
何度か軽く小突いて具合を確かめられたから諦めた。さっきまで抱いていた少しの反抗心や軽蔑を捨てる覚悟を決める。
入られたが最後今日はもう使い物にならないし頭が溶かされてしまうから。
喘ぐ合間に小さく息を吐いて、人でないものになる感覚を思い出しながらその瞬間を待った。
しかしそれが来ない。代わりに中指をつかまれ、反らされる。
「早々に投げ出されるとつまらんからな。」
ほんの一瞬そっちに注意が向いたのがよくなかった。
途端に、肚に穴があいたかというほどの衝撃。
「おっ…ぁ、ぁーーーー…っ」
意識にも穴があく。その穴に体ごと飲み込まれるかと思ったら、中指を鋭い痛みが襲って引き戻される。父に握られたそれは可動域の限界を超えようとしていて、視界にとらえてしまったがために痛みの方に引っ張られた。
おかげで出入りの衝撃がぐぽん、と体の内側で直に響く。
「まだ飛ぶなよ。」
この人にとって子どもは駒だ。所有物で、そして玩具。
壊したら勝手に直って、また壊す。
中指がぎしぎしと音を立てる。体の真ん中の穴に落ちそうなのを、痛みが必死に引き留めている。離してほしい。奥の内臓を暴かれる強烈な快楽はまともな頭では受け止められない。
「あ゛、あ゛、あ゛…!!」
どすん、とまた突き入れられて、同時に握られた指がおかしな方へ曲がった。折れる音は重なって聞こえなかった。中指の付け根から寒気が肘から肩へ駆け上る。全部忘れたふりをして動物のようになれる方へ、いけない。
悲鳴とも嬌声ともつかない自分の音が耳をつんざいた。
まざって父の笑う声が聞こえる。
冷えた方にも溶けた方にも転がり込めない宙ぶらりんのまま、ただ涎だけがだらだらと流れた。
コメントを残す