8/25お題『茶筅(ちゃせん)で地獄の耐久乳首攻め』
今さら何しに来たの。
土壁にこすれる肩が痛い。足裏にあたる、い草の懐かしい感触。記憶と違うのは、もうあの頃のように手入れの行き届いた和室ではなく、埃が積もってカビの臭いをさせる場所になっていることだった。父が趣味で集めて愛用していた茶の道具類も整理と処分の過程であちこち出されて散らかっている。
「馬鹿な兄さん」
容赦のない弟の指が、恐怖からか、空気にさらされたからか、ぴんと上を向いた乳首を無造作につかむ。
「いっ…てぇ…ぅあっ」
長年にわたる行為で、つまみやすい取っ手のように形を変えてしまっている尖りを親指と人差し指でがちりと挟まれ潰される。指の腹で芯をぐりぐりと転がされると、痛みと熱い痺れで、そこだけ火が付いたようだ。
「っあっ…うんん、」
「父さんから逃げて何年もたつのに。なんで来たの」
一昨日まで付き合ってた男も、その前の男も、こんな風に肉を捏ねるような触り方をしてくれたことはない。
幼い頃から仕込まれた体はやわらかく触れられるだけではだめになっていた。本当にほしかった刺激を与えてくれるのは、よく似ている弟の指。
目に映るそれがかつての父と重なって混乱する。毎夜毎夜いつ終わるのかと溶けた海で溺れた日々。落ち着け、あれはもう随分前に死んだ。
「うっ、あ、なん…で、こんな……」
「父さんと何してたか俺が知らないとでも思ってた? 母さんが施設に入ってからずっと3人で暮らしてたのに、気づかないわけがないよ」
そういうところ、昔から馬鹿でたまんない、と低い声をぶつけられ、その口で反対側の突起に噛みつかれる。
「あっ、あ、つよい…っいた……」
何も知らなかったのは自分の方だ。うまく隠して普通の家族みたいな日常を送れていると、この家のバランスを取っているのは自分だと、そう思っていたのはただの驕り。
知らないふりをし続けて、家族の尻拭いをしてくれたのは弟で。
家を捨ててやっと自由になれた俺を、知っていて泳がせていてくれたのに、俺がのこのこ来てしまった。母が死んだから家を処分するなんて代理人からの連絡は、これまでと同じように放っておけばよかったのだ。
「これ、好きだよね」
意識を他所へ飛ばしていた俺を引き戻したのは弟の手に握られたもの。
本来、茶をたてるために使うもので、持ち手から先、細く割られた竹が何本も環状に並んでいる。父の遺した道具だ。ざわりと、その感触を知っている体が戦慄く。
放射状に広がって弧を描く先端は、食虫植物が口を開けたような形にも見える。
「やめ、やめろ……ん、うあぁっ!」
極細の竹が集められた真ん中の茶じみが乳首に食いつく。穂先がまわりにかしゃりと触れて頭が沸騰した。穴でも開けられてしまうのではと思うほど押し付けられる。フラッシュバックする記憶と今の状況がダブって、感覚が研ぎ澄まされた。
「あっ、んんん、ぅ――ア、ぁあ」
指でつままれて外側へ引っぱられるのとは逆に、今度は体の中へ中へ入り込もうとする刺激。ぐり、ぐり、と力を加えられると本当になにかの生き物に口先で抉られているみたいだ。逃れようと体を捩ると乳輪をつかんだ穂先にくすぐられる。
「やめ、ひっ、ああ」
別にどこかを拘束されてるわけじゃない。がりがりとネイルを削りながら畳を掻いている両手は自由だ。突き飛ばして逃げようと思えば本当はできるはず。
心臓のまわりが熱い。弱い部分の皮膚をいたぶられるたびに命を守っている筋肉が怖れて震えた。
「こっちの方が柔らかいんだっけ」
空いていた手にもうひとつ握られた茶筅。穂先の数が多くて、茶にふわふわの泡をたてられるものだ。反対側の胸に当てられて柔らかくくるくるとまわされる。繊細な竹が乳房全体をいったりきたりと撫でまわす。時折尖りを掠めて鳥肌が立った。
「あっ…ぁぁぁ…だっ、め、あう、」
左右の乳首が、硬さの違う道具でバラバラに虐められる。痛みを伴う激しさと、もどかしくて足りないくらいの柔さとをいっぺんに味わわされて、急に下腹に溜まった熱が気づく間もなく服の中で爆ぜていた。
びく、びく、と跳ねる下半身。じとりと濡れた下着。
「……っ、は、……っ」
「あれ、出しちゃってるじゃん」
膝でそこを圧迫されると視界が白む。なのに道具を動かす手が止まってくれない。腫れてさらに膨らんだ媚芯はじくじくと存在感を主張するばかり。
「自分で持って、動かして」
片方の茶筅を任される。自分の手でするのも記憶をなぞれば簡単で、熟れた赤い実を欲のままにいじくった。弟の手がデニムの中に入ってきて、出したものを掬って後ろに触れる。
ああ、弟なのにこんなことさせてごめん。やっぱり来るべきじゃなかった。
胎の中に指を埋めた弟は、なんで知っているのか俺の理性を全部はぎ取るところを正確に狙った。
「ひっ、く、ぁ……んんっ、あ―……っあ」
絶頂したばかりの下半身と、ずっと弄られ続ける胸の突起は感覚がつながってしまって逃しようがない。押して、引っ掛けて、擦って、到底茶を立てるときにはしない動きが血液を泡立てる。ひとりでに茶筅を振るい続ける俺の手を見て、弟は鼻で笑った。
「それ、形見にあげるよ」
できれば二度と見たくなかったはずのそれは、握る左手に糊で貼りつけたかのように離れなかった。竹独特の他にない刺さり心地を噛みしめながら、内臓を暴く目の前の存在を父さんと呼んでしまわないよう、目を開ける。
知らないうちに弟が持っていた方の道具は床に転がされて埃をまとい、自分の手だけが淫らな芯を責める。もう勘弁してほしいとくねる上体を自分で追いかけて、父の名残を動かし続けた。
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