8/20πパンの日
ぴたり、と肌のカーブに沿って当てられた銀の刃。しょり、と厳かな音で白いクリームソープがこそぎ取られる。その下で泡に覆われていた毛がなくなって、するんとした肌が顔をのぞかせた。これまで見たことのなかった弟の、恥骨に沿ってなだらかな弧を描く皮膚。
「肌…綺麗…」
思わず口にすると弟はまた剃刀を動かしながら少しだけ笑った。
「兄さんの方が白くて綺麗だよ」
一足先に全部剃り上げられてつるつるになった股間がむずむずと痒い。今まで空気に触れてこなかった肌は新しい空気を取り込むようにスース―して落ち着かなかった。
美容師の弟は理容の資格も持っていたらしい。友人たちと海へ遊びに行くことになったと告げると、じゃあ知らない人とどうこうならないように全部剃っちゃおうか、と風呂場に連れ込まれた。つい先日勝手にヘアモデルを引き受けて、赤の他人にいいように髪と耳を触らせたことを根に持っていたらしい。
自分だけそんな恥ずかしい股間にされるのは癪だったので、からかうつもりで、お前もお揃いにするならいいよ、と言ったら、まさかの承諾。
そうして緩く勃てられた陰茎を支えられながら、鋭利な刃物を使って、陰毛はすべて剃られてしまった。
次は兄さんが持ってる番、と平常時より重みのある、それでいてセックスする時ほどは勃ち上がっていない弟の陰茎を任せられた。緊張しながらそうっとそれを支え、器用な弟の手が剃刀を振るう様を間近で見ていた。
竿の根本ぎりぎりまで丁寧に剃ったあと、張った陰嚢を避けながら下側へ。ほとんど生えていなかったが弟は確かめるように隙間なく刃を滑らせた。
「できたよ」
ことりと道具をタオルの上に置いて、弟がシャワーを手に取る。弟のものを刺激しないように支えるという重要な任務から解放された俺はほっと息をつく。浴室の床に向かい合わせに座って、湯でお互いの下半身を流した。
「どう?」
聞かれて交互にそこを眺める。臍の下から竿の根本まで、邪魔なものがひとつもなくなって付け根がよく見える。さっきよりもお互い硬度を増し、雄であることを主張するように上を向いている様が鮮明に見えてしまって唾がわいた。
弟が膝立ちになって手招きする。誘われるままに同じ姿勢になると、腰に手を回されて引き寄せられた。そのまま陰茎を合わせられるのかと思ったら、多少力ずくでそれは下を向かされ、恥骨同士を引っ付けられる。もう重力には従わぬと抗う棒は、精液を溜めずしりと重くなった袋を下からびたんと叩いた。
びく、と身体が跳ねる。それまで感じていた緊張が、それをきっかけに全部性感に変換される。すり、すり、と弟がそこをこすり付ける。
「あっ、ちょ、あっ」
「ちょっと新鮮じゃない?」
珍しく少し興奮しているのか、いつもより弟の息が熱い。その手はボディーソープの隣に並んでいるローションのボトルを取って、ぴたりとひっついた肌と肌の間にだらだらと垂らした。こそばゆかったそこが湿り気を与えられてぐちゅ、と卑猥な音を立て、肌をすり合わせているだけなのに骨を伝って膀胱に痺れが走る。
「ひぃ、ぁあっ……そ、れぇ、なん、かへん…」
「きもちいい、でしょ」
不自然に避けられた棒がさらに力を増して、痛みを訴え始める。怒った陰茎でごりごりと押し上げられる睾丸の中で、快感が渦を巻く。
これまで毛におおわれていた肌と肌の接触は、内臓同士が直接触れているようでこの上なく気持ちいい。骨と肉と皮膚とで隔てられているはずの後ろの器官がつられてひくりひくりと収縮を始めていた。
「すごいね兄さん、どこでも性感帯になる」
「だ、っれのせいだと……あ、ア、やだもう、腹が熱いから…いれて…」
剃られたばかりの柔らかい皮膚が熱を持ってたまらない。いい加減陰茎も上を向きたくて辛い。それでも弟が揺するのに合わせて、ぐりぐりとそこを押し付ける腰の動きは止まらなかった。
「余計にイイところ増やしただけで、剃ったの意味なかったかな」
海パンの上から誰かに触られたら大変なことになっちゃうね、と顔を近づけて耳にとろりと言葉を落とした弟が、背中から手を滑らせて尻の間を割った。
「ひっ」
「もうぱくぱくしてる」
ずるん、と指を入れられると前からも後ろからも弟に挟まれてしまった下腹がぎゅうと悲鳴を上げた。最初から手加減なく内壁を捏ねられ、前と後ろの境界線が溶けてなくなる。
「ああっ…だ、め、あんっ…まえ、まえ、も、はな、しっ…てぇ…ッ」
前立腺を押し込まれると視界がチカチカして、止める間もなく達してしまった。
「あれ、イったの」
はーっ、はーっ、と整わない息を吐く。ようやく腰を離してくれた弟が再び床に座る。胡坐をかいた真ん中で、怒張が猛々しく天井を向いていた。赤黒く血管を浮き上がらせたそれに目が釘付けになって、催眠術でもかけられたようにそばへ寄って窪みにめり込ませた。
「今日はずっと、ここ、触りながらしてあげるね」
後孔を広げられるのと同時に、するり、とぬめりをまとったままの皮膚を手で撫でられ、まわりの骨も内臓も沸騰しそうだ。
体毛は身体を外部の刺激から守るために生えているんだったか。覆いを取り去られてなにも守れなくなってしまった下半身を容赦なく侵されて、毛は無駄なものではなかったんだな、と間抜けな思考だけが残った。
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