7/24-57さんにいただいたスケブに寄せて-
濡れた感触で目が覚める。乱れて皺が寄ったシーツ、どこかへいってしまった枕、かけていた薄い布団も蹴り落としてしまったようで向こうの床に丸まっているのが見えた。尻が気持ち悪い。後始末などされないから意識を取り戻した時に怠い体を引きずって自分でやるしかない。腕を動かして隣の辺りをぽんぽんと触ってみたけど人の気配はなかった。
弟が気まぐれにうちに来る頻度が増えている。先週はもう1日おきになっていて、今週はこれで3日連続だ。
手の平をシーツについて腕に力を入れる。上体を起こすとまた後ろの穴からどろりとしたものが流れ出た。
惨めで泣きそうになりながらベッドから下りるために足も無理矢理動かす。
じゃり。
覚えのない音がして、そこを見ると足首に黒く重い鉄の輪がついていた。鈍い色の鎖がついていて、ベッドの下へと垂れている。途端に家畜みたいな気分になって血の気が引いた。
連なる鎖がどこに繋がっているのか確かめようとベッドを降りかけたとき、後ろから肩に手をかけられた。
「どこいくの。」
声の温度が低くて鳥肌が立つ。
「シャワー…しようと思って。」
「いいよしなくて。また汚れるから。」
後ろ首に顔を寄せた弟が、ちょっと前に力いっぱい噛んで皮膚が破れているところを舐めた。ぢりと沁みて痛い。
体が怯えて弟から離れようとしたけど、反対側の肩にも手を置かれると鉛でも乗ったかのように動けなくなった。
「も……無理だって。何も出ない。」
「大丈夫でしょ。」
首から背中へ刻んだ鬱血痕をひとつひとつまたつけ直すように弟が吸う。ところどころ傷になっているところがほかにもあって、いちいち痛んだ。
「な、も、やめろ……。」
「ひどくしたらごめんね。」
耳裏を舐めあげられ、耳たぶを齧られる。ぎりぎりとのこぎりでするように歯で左右に噛み締められるとちぎれそうだった。
背中を駆ける悪寒と悦楽。額に汗が浮かぶ。弟が鎖を持ち上げて足を引っ張りながら背中を押した。
「伏せだよ、兄さん。」
恐怖感にすっかり飼い慣らされた体が素直にぐちゃぐちゃのシーツにまた沈んでいく映像を、他人事のように冷えた頭が再生した。
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