もーそーわんしーんまとめ⑦7/16-7/24 - 6/9

7/21
海開きの日に鉢合わせた時から、夏休みなのをいいことに、どこへ行くにも兄にひたすらついてまわった。無防備に乳首をさらした恰好でまた外を歩くことがないように、だ。兄が友だちと遊ぶのにもついて行き、バイトが終わる頃に迎えに行った。同じ大学だというのは生活時間を把握するのに大いに活用できたし、2人そろって飛び抜けて大きな体格で目立っていたから兄の学年にも顔が知られていて、まわりの人がお兄さんあそこにいたよ、といつも教えてくれた。
兄はこの状況をどうすべきか悩んでいるようだった。俺の顔を見ては難しく眉を寄せて言葉を飲み込む。いい気味だから何も聞かずにこちらのしたいようにした。朝起きれば耳をくすぐり、出かける前には腹や腰をなでまわした。尻を手で包んで時々揉むと怯えたような顔になるのがおもしろかった。

 

黄色い歓声に囲まれてパフェの上でクリームにうずもれていた真っ赤なイチゴを兄の唇にはさむ。
俺たちを揃って連れて歩くとホイホイ女の子がつれると男友だちは喜んで、言わなくてもよく俺を誘ってくれるようになっていた。触り心地のいい子を何人か入れて、今夜も学生らしい盛り上がりをみせている。カラオケルーム、流行りの曲、安酒をほどよく入れて浮わついた空気、その中で外面を気にして俺と仲がよさそうな演出をしていた兄は、誰が始めたのかもわからない、古い時代のくだらない王様ゲームが示したお題にほんの少し顔をひきつらせた。呼ばれた番号は兄と、弟の俺。
女の子っていうのはどうして見た目のいい男同士を絡ませたがるのだろう。兄が俺と仲良しのふりをするのだって、その子たちが喜ぶからだ。
「いくよ兄さん。」
手を叩いてはやしたてられる中、咥えさせたイチゴをかじると兄が頭を小さく後ろへ引いた。何人かの子が興奮してスマホで動画をまわしているのを目の端で確認して、逃げた後頭部を捕まえる。
残りのイチゴを舌で口の中に押し込んで兄の舌とで挟み、ぐしゃと潰す。甘酸っぱい果汁が歯茎の横を流れると兄の肩が揺れた。唾液ごとそれをしゃぶりたいのを我慢して口を離す。あんまり人前でゆるんだ顔をさらしてしまっては、また変な虫がつくからだ。
沸いた周囲とは裏腹に兄は不機嫌そうに顔を背けて袖で口を拭き、あっという間にその表情をいつもの軽い調子のキャラクターのものに戻していた。

 

「なんだよあれ。」
真っ暗な部屋に帰って電気をつけた途端に兄がそう言った。
「なにって。ゲームでしょ。」
「人前であそこまでしなくてもいいだろ。兄弟なんだからよ。」
「兄弟だからあのくらい大丈夫だと思うけど」
それとももう一回する?と顔を近づけるとあからさまに真っ赤になって飛び退いた。
「しねぇよ!」
「あ、そう。」
「だいたいなんだよ最近やたらベタベタと……いやがらせかよ。」
そういうつもりではないのだが、相変わらず肝心なことは何一つ伝わっていない。
「違うよ、前から言ってたよね、俺。もう我慢しないことにしただけ。」
「がまん……って…」
墓穴を掘ったことに気がついたらしい。この家に同居してからの数か月、日常の会話に混ぜて兄を自分のものにしたいという言葉を繰り返し聞かせ続けていたのだ、気づかない方がおかしい。美しい造形の顔は赤くなったり青くなったりと忙しく変化している。薄々気がついていたのに、本気なのか冗談なのか計りかねて、自分が傷つかないようにあえて直視しないでいたのだろう。

俺はもう、あの兄が酔いつぶれた日の夜から、何があっても手に入れると決めているのに。

手を伸ばして片手で頬をつかむ。嫌がるよりも先に固まってしまったのをいいことに、また口をふさいだ。もうイチゴはない。これはゲームじゃない。
「ふっ…んん……」
合わせ目をこじ開けて舌を突っ込む。驚いて引っ込んでしまったものを追いかけて、顔を傾けさらに深く合わせる。さっき啜らなかった唾液を啜って、舌をからめとるようにすると鼻から息が抜けていった。もう、諦めればいいのに。
息継ぎが難しくなってから離してやるとうっすらの涙の滲んだ目でこちらを睨んで、スマホだけひっつかんで出て行ってしまった。

玄関の鍵もかけずに大きな息を吐いてソファに沈む。兄は混乱しているだけかもしれないが、こちらはといえば、堪能したばかりの熱い口の感触と、さっきから大げさに変わる顔をずっと眺めていたおかげで下半身に熱が溜まって痛いほどになっていた。
おさまるのを待つのも面倒で下着とボトムをずらして自分のものを取り出す。かわいらしくなく天井に向けてそそり立つ硬い竿を掴んで雑に上下に擦るとそこに向かってますます血が集まる。
兄はあのまま今日は戻らないかもしれない。別にどっちでもいいのだが、あのぐちゃぐちゃの脳内のまま知らないところで知らない誰かと一晩すごすなんてことがあったら気に入らないことこの上ない。
むっとした頭に呼応するように股間はビキビキと音を立てそうなほど脈打った。その様子が妙におかしくて、鈴口に滲んだ汁を絡めてゆるく上下にもてあそぶように扱きながら、反対の手でスマホを取る。
目当ての送り先はいつでもすぐに出せる位置にある。たぷたぷと打った簡単な言葉。
『ごめん。ちゃんと話したい。』
たったこれだけであの優しい兄は、話し合いを望む肉親を放っておけず頭を冷やしたところで帰って来るのだろう。
嫌な感じに口元が歪むのがわかる。子どもの頃からこつこつと積み上げてきたものは高くなりすぎて重く、だいぶひねくれて倒れそうになり、そのバランスの悪いところにまた新たに積み上げられて、救いようがない形になっている。

ごめん、兄さん。でもこれをぶつける先は、あんたしかない。

根元からさらに育て、首のまわりをくるくると指でたどって頭を揉む。下腹が熱くなってへその下あたりが先っぽへ向かって照準を定め始めている。あの潰したイチゴの感触を思い出そうと、スマホを離した手でべろをつまんだ。息が喉に詰まる。
握る手に力を入れて上下に動かすだけの単純な刺激を追いかける。もうすぐ腹の底の醜いものを少しだけ吐き出せそう、と思ったタイミングで、正面の玄関が開いた。

「……なにやって……。」
「見たままだよ。」

兄は靴も脱げずに固まっている。わかりやすくこめかみから汗を垂らす様を見ながら、手は止めずに動かし続けた。追い上げるための湿った音だけが部屋に響く。耳のいい兄には間違いなく届いている。
涎をこぼす切っ先を兄に向けながら、甘えた声で手を伸ばした。
「こっち来て、兄さん。」
話をしよう。
操られたみたいな動きで鴨居より高さのある体が強張った歩き方で寄ってくる。近くまできた手を取って、もうすぐ噴き出しそうなものを握らせると喉仏が上下に動いたのが見えた。反対の手でズボンの上から兄の股座をつかむと明らかに兆している。
「やめ、さわんな……」
「ねぇ兄さん、一緒にしよう。」
つかんだ手を逃がさないように捕まえて、兄の下着をおろすと握った感じよりもっと硬くなっていそうな茎がぼろりと宙に浮いた。
立ち上がって腰を寄せ、俺のと2本まとめて兄に握らせて上から手を添える。
「兄弟でこんなこと……。」
弟の自慰を一見しただけで勃てているくせに、しぶとく逃げる口実をまだ探していたから、覚えの悪い口を軽く塞いで。
「兄弟だから、このくらいするでしょ。」
当たり前のように言い切ってひっつけた兄の体温を感じながら指に力を込めた。
兄弟だからとか、恋人とか友だちとかセフレとか、名前なんかどうでもいいから、そろそろ兄さんを全部ちょうだい。

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