もーそーわんしーんまとめ⑦7/16-7/24 - 5/9

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カットモデルをやらないか、と誘われたのは、弟の勤務時間ラストに髪を切ってもらった後、帰り支度を待っている時だった。
ウェブに載せるお店の見本としてカットさせてもらいたい、と長い前髪をかきあげながらその男は店長だと名乗った。
その手の誘いを受けることはよくあるが、たいてい面倒だからと断っている。髪は整えてもらったばかりだしどっちでもよかったが、弟の勤め先をあんまり無下にしても、と引き受けた。当たり前のように弟が切るものだと思った、というのもある。

約束の日に訪れるとカットしたのは例の店長だった。弟は休みの日だったらしい。事前に細かく聞いていなかったのは自分だし、別にいいかと、されるがままにシャンプーとカット、セットをして写真を撮ってもらい、出来を確認させてもらっておしまい。シャンプーの時何度か耳を触られたけど、引っかかることもあるだろうし、だいたいどこの美容室でもそうだから気にしなかった。結べる程度の長さは残したかったのでほんの少しのカットだけ。交通費に色を付けたくらいの謝礼をもらって帰った。

「また切った?」
風呂に入ろうとしてTシャツを脱いだところで、部屋から出て来た弟に後ろから声をかけられた。
「ああ、お前んとこで。ホームページに載せるからって店長っていう奴にヘアモデル頼まれた。」
「へえ。」
「お前が切るんだとばっかり思ってたんだけどさ。休みだったんだな。」
弟が襟足の髪をするりと拾ってぱらぱらと放した。切り方の仕上がりとか気になるんだろうか。そのまま後頭部に手を差し入れ、耳の後ろの髪を手に絡めて梳く。切れた髪がぱらぱらと落ちていった。何度か繰り返すうち耳を掠めて、ぴくりと頬が動く。
「洗おうか?」
「洗ってくれんの?」
「いいよ。」
脱ぎかけだった服を全部脱いで、浴槽に座って壁に背中を預け、頭を後ろに出す。少し硬いが仕方ない。袖をまくった弟がシャワーをだして、髪を濡らしながら頭皮に指を滑らせた。シャンプーを泡立てて、地肌を十本の指で押しながらまんべんなく泡を髪にまとわせる。強くも弱くもない絶妙な力加減だ、この前と同じ。
両手を大き目に広げて下から持ち上げるように頭を支えられ、ぐ、と指の力を加えられる。頭皮も凝るというのは聞いたことがあるが、もみほぐすように長い指が断続的に頭の形に沿って地肌を押した。
「おーさすがプロ。」
じわり、と頭の方から首があたたかくなってくる。後頭部に這ってきた手は首の付け根を優しく何度か押し、また頭へとあがってきて、耳の後ろをぐいぐいとマッサージしてくれる。ひっかかった指が耳孔に入ると飛び上がって変な声を出してしまった。
「兄さん、美容院でいつもこうなの?」
「こうって、ひゃっ…あっ、わざとするのやめろ」
明らかに耳を狙って指を使い始めたことに気づいて弟を睨む。泡のついた指をそのまま入れられるとぐしゅと音がして背筋がざわついた。
「シャンプーの時、耳、さわられない?」
「んっ、引っ掛かっちまうもんじゃないの?」
「本当は引っ掛からないようにやるんだよ。」
ヘッドマッサージを施されて血行がよくなってきたからか、耳も熱くなっていてすぐに変な感じになってしまう。
両耳に泡ごと指が入ってきてぐしゃ、ぶしゅ、と濡れた音だけで塞がれると派手に何度も跳ねてしまった。指をまわしながら耳の壁を擦られ、両側から脳に手を入れられているようだ。
「そ、れ、やっ…っ」
喉仏が震える。さっさと頭を起こしてしまえばいいのに力が入らない。他の指で同時に耳介をくすぐられると奥歯ががちがち音を立てた。
「そんなことも気づいてなかったの。」
ただの客にそんなこと気がつけというほうが難しいのではないか。たとえ少ししつこく触られることがあったとしても、自分の耳が狙われているなんて普通は考えない。
「一回触るとわかるから。耳が弱い人。」
「ひんっ…あ…」
そんなことは知らない。ぽかぽかとあたたまる感じだったはずなのに、急速に体温をあげられて体のあちこちをおかしくする熱を与えられている。じゅぷ、じゅぷ、とまるでセックスしているときのような音を立てられ、今からやるのかと勘違いした後孔が切なく締まった。
「そういうところ、迂闊だよね。」
弟の指が耳たぶをぎゅっとつまんでひっぱるともう体が完全にできあがってしまった。シャワーを浴びるつもりで全裸だった俺はどこも隠すことができずに、耳に突っ込まれた手を取って、次に進んでくれとねだった。

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