7/12―7/4民間調査会社宇髄家のお仕事ばーじょん、宇弟―
両手に思い切り体重をかけて巨大なハンドルを回す。ガコンという音とともに扉と本体をぴったり付けていたパッキンがはずれて巨大な入口が開き、冷気が勢いよく漏れ出した。
めずらしくしくじったという兄が閉じ込められていたのは片田舎の物流倉庫。大型の冷凍室の中、隅に段ボールを敷いて小さくなった兄は紫色になった唇を震わせながらも、それでも奥歯の中に今回の仕事の成果でもあるナノメモリーカードをちゃんと隠していた。
「兄さん。」
呼びかけながら毛布をかける。ちらりとこちらを見はするものの、それ以上の反応はない。おそらく低体温だ。救出に入った同じチームのメンバーと手分けして痕跡を消し、兄さんを連れて車に乗り込んだ。
外は熱帯夜、身体にまとわりつく湿度が不快だ。だがその暑さも届かないほど、身体の芯まで冷えきっているようだった。固まってなかなか開かない口に手を突っ込んでカードを取り出し父の元に届くよう手配する。それから他のメンバーは足がつかないようそれぞれのやり方で帰路についた。
2人だけになって、まれに使う一時的な隠れ家に車を停め、後部座席にうつり毛布の上から兄の身体を抱き締めた。小さな震えが止まらない。提携外の病院に運ぶわけにはいかないが、自宅にしろ、うちの息のかかった施設にしろ距離がある。父に報告しなければならないがスマホを手にする気にはなれず、同じ毛布にもぐりこんで手を握った。冷たい。
ドアロックがかかっていることを再度確認して服を脱ぐ。兄の服も脱がせて直接肌を触れさせると手足がのろのろと動いて巻きついてきた。ぎゅうと抱き込んで足を絡める。暖かい飲み物でもあればよかったが、季節柄、自販機にはなかった。
このまま進めていいものか迷っていると、兄が冷たい額を何度もぐりぐりと首元に擦りつけながら、背中を撫でまわし始めた。少し動けるようになってきたのか。そしてやるべきことはわかっているらしい。両手で顔を挟んで口を開けさせ、自分の口を付ける。鏡を曇らせる時のように太く息を吹き込み、舌を入れて唾液を分けると懸命に吸い込もうとした。
股の間に滑らせた太ももで中心に触れると縮こまっている。長いこと冷やされていたから急所が体内に入り込もうとしているのだろう。
口を離して体勢を変える。股の間に頭を入れ、怯えたようになっているものを口に含み、熱を持った自分のものは兄の口に突っ込んだ。袋を手で包んで温めながら、竿に舌を這わせる。根本から先までまんべんなく唾液を絡ませ、手の中の丸いやわらかなものを時々転がすように揉んだ。少しずつそこに熱が宿り始める。
兄の方も、先端から滲む熱い汁を啜って食道の方へ取り込もうと、何度もじゅうじゅう陰茎に吸い付いてきた。口腔内の温度も先ほどより上がってきている。
「悪いけど先に口に出すよ。」
一応断りをいれてから、兄の上顎に擦りつけるように腰を揺らし、なるべく喉の奥の方を狙って吐精した。一瞬兄の頭がびく、としたが、あたたかいものが流れ込んできたのを素直に飲み下していた。
今度はこちらだ。だいぶ起き上がってきたものを喉奥まで入れたり出したりして刺激を与える。血管が膨らみ、下腹の方からどくどくと血潮が先に向かって流れてくるのがわかる。いい調子だと思っていると、兄の手が臀部を割って後孔をまさぐってきた。
「兄さん動けるの?」
心配と苛立ちが混ざった微妙な声が出る。
「献身的な弟のおかげで、だいぶ。」
普段からするとかなりしおらしく掠れた声になっているが回復してきている。
「それはよかった。」
「もっと飲ませろよ。」
少し安心したのもつかの間、出したばかりで力を失ったものを再び口の中で転がされて腰が跳ねた。兄の大きな舌が頭を捉えてくるくると遊ぶように舐める。根本のもっと下、膀胱のあたりがむずがゆく疼いた。
「ま、だ…たたな…」
「出せるだろ。」
いつの間に唾液をからませていたのか濡れた指を後ろに入れた兄は面白そうに口蓋と舌で俺の陰茎を挟んでぐいぐいと引き込んでくる。
「……っ、う、あ、」
さっきまで凍っていた人間とは思えない。意図がわかって調子に乗るなと睨んでみたがますます指を深く入れられて、口の中に押し付けるように動いてしまった。
兄がちゅうちゅうとわざと音を立てながら頭ばかり吸い始めて、急激に何かが押し寄せる感覚に襲われる。どうせ離してもらえないと覚悟を決めて、迫る快感の波に身を任せると、腹にくすぶっていたものが先に向かって噴き出した。
「う…………っっ…!」
ぷしゃ、と出たものはすべて兄の喉の奥に消えていく。そんなものを飲むなと言いたいがひきつって変な声しか出ない。
全部飲み込んだ兄は自分の腹のあたりを撫でて情けない顔で笑った。
「さすがにちょっと死ぬかもと思ったわ。助かった、ありがとな。」
のんきな様子に呆れて入れっぱなしになっていた兄の屹立を口から出すとさっきの引っ込み思案はどこへやら、ずい分グロテスクに育っていた。
自分が始めたことでもあるので仕方ない。口ばかり元気を取り戻したとはいえ、長い時間、低体温だったから首から下はまだ思うように動かないはずだ。毛布を脱いでしまわないよう背中から広げて、仰向けにした兄の上に跨る。
「あんなところで兄さんが死んだら、うちの家の名折れだから。」
潮まで噴かされたことの嫌味も込めてそう言うと、兄の顔が歪んだ。
「ほんとお前親父と家のことしか考えてないのな。」
「兄さんはもう少し家のことを考えたらいいんじゃない。なんだかんだ、こうして仕事続けるならね。」
他の仕事をするなんて選択肢が兄に与えられていないのは百も承知で煽ってやると、小さく舌打ちして俺の腰をつかんだ。後ろは指一本軽く入れただけだがまぁいい。どうせこの身体も生まれてから死ぬまで家のものだ。少々壊れたところで。
「ああそうかよ。悪かったなしくじって。」
まんまと子どものように苛立った兄が昂ぶりを押し付けてきて、俺もそのまま受け入れた。狭い器官を破りそうな大きさのものが侵入してきて、内臓が押し上げられる。
「ふ、うっっ……」
息を吐きながらなるべく力を抜いて重力に逆らわず埋めるようにする。それが一番楽だからだ。奥まで届いて使い物になりそうなそれは温度もちゃんと高まっていて安心した。
「き、つ…」
兄は呟いて一度ふうと息を吐き、つかんだままの腰を思い切り引き付けてきた。ごり、と急に奥が抉られて息が詰まる。残念なことに兄弟だからなのか身体の相性がいい。大きさぐらいしか能がないかと思っていたけど、最初に暴くことを許した時から、絶妙なところにはまり込んでくる。揺らされると同じところに何度も当たってじぃんと腰が痺れた。
「あ、うっ……んっ」
気を抜くと、まだ許可していない奥の内臓まで簡単に届きそうで、そこはまだカードとして取っておかねばと、家長に躾けられている内壁をねっとりと締め上げる。ただそれをやると自分で前立腺を兄の陰茎に擦るようになってしまってびりびりと甘い刺激が全身を駆け巡った。
「それ、される、と、めちゃくちゃムカつくわ」
額に汗を浮かべた兄が忌々しそうに言い捨てる。ぶつける先がなくて俺とこうするしかないのに、背後にどうしても父が見えてしまうからだ。どうせ家から逃げることなんかできないくせに、どこまでも牙を剥いて自分だけまともな人間であろうとする兄の姿を見ると、ふ、と笑えてしまって、隠すこともなくそのままその顔を見せつけた。
するとさらに逆上した兄が下から激しく突き上げてくる。
「ぅあっ、ん、ぅ、ん、」
それだけ動けるようになったのならもっと感謝してほしいくらいだが。笑いながら喘ぎながら、復温したならもう早めに終わらせてしまおうと、尻の筋肉に力を入れて、兄の動きに合わせて腰を浮かせた。
もしかして冷たいままだったら、なんて思った時間を返してほしい。どれだけこの人に付き合って身体をつないだところで、俺に向けられるものは変わらない。父はおそらくそれも見越して俺を仕込んだのだろう。
だいぶ拗れるまで気づかずきてしまって、戻る術がないのは俺も同じだ。背後に重く暗くのしかかる父の影を感じながら、もうどこも冷えていないか身体の先まで触れて確かめて、兄のぶちまけた熱いものを受け止めた。
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