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早朝から夜中まで、あちこちから「社長」と呼ばれて与えられた仕事をこなす。父が急死してから3ヶ月。ようやく呼ばれているのが自分だと認識できるようになった。
「兄さん、先にジャケット脱いで。」
今日予定されていた最後の客人を見送って椅子に深く沈み込むと、スーツが皺になるからと立たされた。跡を継ぐ気があまりなかった俺と違って、父の手伝いをするつもりだったらしい弟は、2年前から秘書になるための勉強をしていて、葬式の後、喪服のまま社長に据えられた俺の秘書だ。
「なー、もうネクタイ取っていい?」
質問には答えず弟はジャケットを所定の場所にかけ、それから俺の首元をほどいてくれる。やっと息ができた気がして、今度こそ椅子に沈んだ。
父親の死は事故だったためにあまりに急で、自分がやらないなら会社を誰に任せるのかとか、そういうことを考える余裕もなく、顧問弁護士だとかいう奴に早々に手続きをされてしまった。
「だいぶ慣れた?」
背もたれに首を預けた俺の髪を耳にかけながら弟がのぞきこんでくる。
この見た目のせいで、そこそこ大きくなるまでは父に仕事に連れて行かれていた。飾りみたいに側に置かれて、不躾に眺められたり触られたりするのが幼い俺の仕事だった。皮肉なことに、そのおかげでこの3ヶ月、顔が知れているからか割と上手くやれている。敏腕なんて言ってくれる人も出てきて、悪い気はしない。
「今日は俺完璧だったんじゃね?」
わざとらしくにやりと笑って聞くと、弟が目を細めた。
「全然だめ。会食の時一度箸を取り落としたよね。」
「テーブルの上だったろ。」
「それでもだめだよ。2件目の専務のところの猫の名前も間違えてた、あと、あの女社長が通ってる美容室は銀座じゃない。昨日渡した資料に書いてあったでしょ。」
えー……俺そこまで完璧じゃないとだめかな。細かすぎて閉口していたら、弟が耳元で言った。
「わざとかと思った。」
お仕置きされるための。
ぞくりと首がざわつく。そういう日もあるけど、今日は本当にただ抜けていただけ。
「じゃあ、して。お仕置き。」
期待を込めて目を合わせると、弟は黙って体を起こし、ワイシャツの袖のボタンをはずし始めた。してくれるとわかると体温がみるみる上がる。さっきまでヘトヘトだったのが嘘のように、軽い動きで立ち上がってベルトを開けた。ちょうど尻だけ出る位置までスラックスをずらして内腿に挟み、それ以上落ちないように力を入れる。椅子のひじ掛けに手をついて、前側にしか布地のない下着をつけた柔らかい双丘を弟に向けた。
肘まで袖をまくりあげ、手の平にはぁと息を吹きかけて弟が振りかぶる。
「いくよ。」
パァン!
乾いた音と同時に尻の表面が破裂したような感触。電気が走って頭のてっぺんを刺す。
「……っ!」
たった1発で涎が出るほどの気持ちよさ。もう一度構えた気配がしてひじ掛けを握りしめる。
パァン!
「ぁあん♡」
だらしなく開けていた口から声が出た。皮膚がびりびり振動して熱い。
「宇髄社長は変態だね。」
仕事中はまったく揺れない弟が少し楽しげに言って、また腕を振り上げる。
「いま、しゃちょうって言わなっでぇっ」
パンッ!
空気を裂く音に膝が折れそうになる。真っ赤になった臀部が今度は左右に開かれた。ぱくぱくと餌を求める金魚の口のような穴が、明るい部屋でさらされる。
「行儀の悪い兄さん。」
つかんだ肉を真ん中に寄せたりまた開いたりして弟が遊ぶ。穴の奥が切なくなって、前がぱんぱんに張り詰める。
「ご、めんなさっ…あぁあっ♡」
言い終わる前にまたバチンと叩かれて語尾が跳ねあがった。気持ちよすぎて尻が揺れる。ほとんどこの仕置きのために社長をやっていると言ってもいいほどだ。就任するとき、自分がきちんと監督するからと言った弟は見事に俺を飼い慣らしている。
腫れてきた肉の割れ目をたどって指がずぶと中に入った。一瞬頭が飛びそうになれたのにすぐ抜かれてしまう。
「先にイけたら中もしてあげる。」
丸みをゆっくりと撫でられて、じんじんする肌が次の衝撃を望んで震えた。臍の下あたりに力を入れて、甘く響く痛みを待つ。もう2発ぶってくれたらこのだめな体は昇りつめることができる。
ますます突き出して叩きやすいように誘うと、さっきより速度をあげた腕がひゅんと走った。
「あああっ♡」
バツンと重みのある音がして全身がぶるぶると絶頂に向かう。
あと、1発。
背中を反らせていっそう意識をそこだけに集中させる。最後はもう平手が尻を打つ前に、弟の腕が空を切った音だけで弾けていた。びゅる、と白濁が飛び出たあとにバッチンと届いた打撃で中がぎゅうぎゅう締まって応える。
「うんんんっ…♡♡」
頭の中がチカチカ点滅して止まらない。溶けた目で肩越しに弟を見ると前を寛げているのが見えたから、めいっぱい笑顔を作って両手で穴を広げて差し出した。
これでまた明日からまっすぐ立てる。
窮屈なネクタイを締めて、スラックスの裏地に肌が直接触れてしまうような下着を履いて、慣れたような顔をして役職を演じる。そのためにこれは、必要なことだった。
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