もーそーわんしーんまとめ⑤6/26-7/5 - 9/10

7/4
だめだよ、兄さん。
小さな頃からそう俺を咎めていた弟は、まったく同じ表情で、いいよ、と言った。
組伏せたシーツの上、まだお互い制服のままで。押さえた手首に力は入っていない。抵抗する気はないらしい。つまり、これが親父の意向だということ。他所で余計なことをするくらいなら、こいつを好きにしていいと。
ああ、そうかよ。
今まで何もかも、俺の自由意思で選択しようとしたものはだめで、でもこれはいいんだ。
そう思うと自分の人生もこいつの人生も心底馬鹿馬鹿しくて、ここまで積み重ねられてきた投げやりな気持ちが暴力的なものに変換されていく。
「お前はそれでいいのかよ。」
とても嫌な顔をしている自覚はある。でももう止められない。弟は表情を変えなかった。
「別にいい。そういう役割だから。」
何もかも受け入れるつもりだという静かな様子にとてつもなく腹が立って、雑にベルトを外した。

小学生の時、持っていなかったカードゲームを見せてあげると誘われて、クラスメートの家に行こうとした。いそいそとおやつをカバンに詰めていたら、2つ下の弟が咎めるような顔で「だめだよ」と言った。うちは昔から家同士の付き合いがあるところにしか遊びに行ってはならない決まりだった。それでも子どもだ。俺は他の子と同じように自分が遊びたいと思った相手と遊びたかった。
でも弟にそう言われて、年下のこいつがわかって我慢しているのに俺はなんてだめなのだろうと思って、遊びに行くのをやめた。
弟は見た目が父によく似ていた。落ち着いた黒い髪、俺より静かなトーンの目。だから父に言われているような気になってしまったのかもしれない。
その時からすでに、こいつは俺の見張りだったんだろう。それからは友だちも恋人も、許可された以外の人間とつながりを持つことをことごとく阻止された。
素行も徹底的に見張られたし、目を盗んで何かやらかした時は弟が窓口になって学校と親父をつないだ。こんな環境でひねくれるなという方が無理だと思う。

いいよと言われた時から想像はしていた。そんなところを濡らすための物なんか持っていないからカバンに入れてあったジェルタイプの日焼け止めを指に塗って尻に入れた。弟はゆっくり息を吐いてそこを弛緩させる。思ったより難なく入った指はそのまま引き込まれるような中の動きで奥の方へ誘導された。
男は初めてだけど、これは。
「お前、親父に仕込まれてんのかよ。」
「……。」
沈黙は肯定だ。
俺たちは生まれた時からあれの手の平の上だけで生かされているということ。どうやったって人間らしくさせてくれる気はないらしい。もう笑うしかなかった。
「いいぜノってやるよ。」
指を引き抜いて四つん這いにさせる。自分のものを取り出して何度か扱いて勃たせ、その小さな穴に突き立てた。めり、と音が聞こえた気がする。きつい。構わず腰を進めると、弟がぎゅうとシーツを握ったのが見えた。たいして慣らしもしていないから苦しいのかもしれない。裂けたりはしてなさそうだったから、まだ入りきっていない分を力任せに押し込むと、小さく詰まった声がもれた。
「っう……!」
熱い壁に包まれる。女の体内と違う。まるで習い事のようにそっちは経験させられていたがそれとは具合が違った。
ぎちぎちと棒全体が締め上げられる。不覚だが気持ちいい。
背中に覆い被さると、色づいた耳がそこにあった。普段、ほとんど色味のない弟の真っ赤に染まった耳たぶ。こんなに雑に開かされても快感を拾えるようにしつけられている。
俺もお前もつくづくかわいそうだな。
そう思うとどす黒い欲望が首をもたげた。
「声出せよ。」
「っ?」
「俺の好きなようにしていいってことだろ。声、出して。命令。」
強い言葉をささやくと、弟が口元の力を抜いた。少しでも声を出しやすいようにと下半身の中心に手を添えると完全に硬くなっている。握って動かすのと同時に奥まで入っていたものを勢いよく引く。
「ぁああっ…」
こぼれた声が煽るために計算されたものなのか、思わず出てしまったものなのかはわからない。けど次の律動の助けには十分だった。許可したのはこいつだ。遠慮なく思い切り奥まで入る。なんの技術も伴わない前後運動なのに下腹がぶるぶる震えていて感心した。
「できた弟だよ、まったく。」
「あ、ああっ…ん、う、っく、んんっ…あ、うぅ」
だんだん口が閉じなくなるのか、シーツにつうと涎が垂れる。どうせはじめから全部親父に読まれていたのなら望みどおりぐちゃぐちゃにしてやる。
腹を支えて体を起こし、上に弟を乗せて座る。さっきより深みにはまりこんで雁首が締められた。
「俺不慣れだから、自分でいいとこに当てろよ。な。」
言いながら腰骨をつかんで下から突き上げる。
「んんんっ、や、そ、こっ…ああ、っ」
俺の膝に手をついた弟は角度を調整して尻を落とす。まだ余裕がありそうなところが気に食わない。下まで落ちてきたところをつかまえて腰をまわすようにしてやるとのけ反って喘いだ。だらだらと汁をこぼす陰茎も撫でながら、もっと奥まで入ろうと押し付けて揺らす。体を震わせた弟の中がねじれるように動いて痙攣した。絞り取られそうになって息を詰める。長くびくびくと蠢く肉に、乾いた笑いを吐いた。
「お前ほんと、最悪。」
前から吐き出さず絶頂できるほどにできあがっている体。俺をこの家に縛り付けて言うことを聞かせるための。
わかっていながら高められてしまった自分に嫌悪感を抱きながら、家に、親父に対するどうしようもない不満をぶちまけるためだけに痙攣の収まらない内臓を擦りあげた。
ただひたすら従順にあげられるよがり声が、耳に貼り付いた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です