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シューズボックスに背中を押し付けられて片足を担がれ、後孔で猛った棒を受け入れながら横目で見ると鍵が閉まっていなかった。帰ってきたら開けられてしまう。
しがみついていた肩から片手を離して扉に向かって伸ばす。揺らされる動きに合わせて指が上へ下へと逃げてしまって鍵のつまみを掴めない。
「鍵、気になる?」
「ああっ」
おもしろそうにひと際強く奥を抉られ、姿勢が崩れて斜めにすべり落ちた。バランスを取ることができず、そのまま伸ばした手を玄関の扉について踏みとどまる。
中のものがいったん抜かれて体の向きを変えられ、そこにすがるような恰好で腰を掴まれた。
「静かにしないと、人が通ったらばれるよ。」
言われて感じる、鉄の戸1枚隔てた向こうの気配。だれかいる。
「ま、って…」
できるだけ細く後ろに向けて出した言葉は、勢いよく挿入された音でかき消された。
がた、がちゃ、明らかにそこに向かってぶつかる音が外廊下に向かって響く。足元からわずかに、靴底についた砂と床のコンクリートがこすれる音が聞こえる。見えないはずなのにそこにある目つきが想像できる。そこに立って、こちらを見ている。
「すごい締まってる。見られたいんだ?」
後ろから男にそう言われて、前から扉を貫通してきそうな目線を感じて、どちらからも責め立てられ何も隠すことができない。中に入っているのがだんだん誰だかわからなくなって、気持ちよくさえしてくれるなら何でもいいと、疼きを埋めるものをぎゅうぎゅうに締め上げた。
好きなように激しく突かれて、声も抑えられないまま、あの鋭い目の方に向かってどろどろのものを吐き出す。
なんとか呼吸を整えるころには、外にはなんの気配もなかった。
濡れた髪をタオルで包んで風呂から戻ると弟は本を手にソファの一部になっていた。
「帰ってたんだ。おかえり。」
声をかけると、本を閉じて机に置き、立ち上がって、入れ替わりに洗面所に向かう途中でちらりとこちらを見る。その視線の先に肩口の鬱血の跡。
表情を崩さず、弟が呟く。
「彼氏の趣味悪すぎ。」
音を立てずに閉められた洗面所の扉を抱きしめたくなって、顔をこすり付ける。口に出して言えない肉親に対する想いは自分でも呆れるくらいに膨らんでいて。どこにもぶつけられずに捻じれて変な方向を向いてしまった。
本当は気づいていると思うのに。弟はなにも言ってくれない。
俺、お前に見てほしいんだよ、早く気づけよ。そんで怒って。
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