もーそーわんしーんまとめ④6/16-6/25 - 2/10

6/17
夕飯に食べるものを適当に突っ込んだビニール袋をガサガサと鳴らしながらアパートの階段を上がる。ところどころ腐食しているそれは踏みしめるたびにギシともビシとも言えない不気味な音を立てる。上がりきったところの部屋はお隣さん。学生らしきそいつは色落ちした金髪が自分と同じくらいの長さで正直あまり好きじゃない。挨拶しても返ってこないけど、こちらの方が大人だと意地でも主張するために見かけたらこんにちは、と声はかけることにしている。阿呆らしい。
玄関扉の横、目線の高さの小さな窓が2センチほど開いていて、女の喘ぎ声がキーキーもれていた。最近女ができたらしい。
大きくため息をついて、わが家の玄関を開けた。たたきの隅にびしりと揃えられた革靴。今日は定時だと言っていたから弟はもう帰っている。だが部屋の中には気配がない。馬車馬のように働くあいつが早く帰れた日に限ってこれか。
シンク横に買ったものを置く。地球のことを考える余裕がない俺たちはエコバッグなんか持っていない。
がらんとした和室を通り抜け、洋室に足を踏み入れる。ボロのくせに1室がフローリングなのは、俺たちが入る前にちょっとしたリフォームがあったから。だが壁が薄いのはどうにもしてくれないらしい。右側の壁からはキーキーに加えてベッドがきしむ音まで聞こえる。左側にはつくりつけのクローゼット。
弟のスーツが整然と並ぶそこの扉を開ける。短い黒髪が腰のあたりにあった。膝を抱えてそのスペースにぴったり収まっている。
「おかえり。」
声をかけるともったりと動いて弟が顔を上げた。
小さな頃、父と母が交互に誰かを連れてきては家でそういうことをしていたから、俺たちは毎晩あの声を聞いて育った。特に弟はあれが嫌いだったようで、押し入れやクローゼットの中に避難してやり過ごしていた。大人になった今でもそれは続いていて、他人のあれと遭遇するとこうやってクローゼットにこもってしまう。
不機嫌極まりない顔が俺をとらえる。潜んでいた獣が餌を見つけたように、強い力で腕をつかまれ引っ張りこまれた。肩と脇腹がチェストにぶつかって痛い。後頭部をつかまれ、唇を合わせられる。歯がぶつかりそうな勢いだ。これは相当苛立っている。口をこじ開けられて舌を吸い出され、弟の口の中で歯を立てられた。
「いっ、う…んん」
甘噛みなんて可愛いものじゃない、普通に痛い。つたっていった唾液を弟が飲み下した。
「あっちよりいい声出してやるから、風呂行こうぜ。」
風呂場は壁1枚隔てて隣と接している。音も響くし、太い声で張り合ってやろう。
無言で立ち上がった弟が1枚ずつ服を脱ぎ落としながら風呂に向かったから追いかけた。洗い場に入るなり、ひねったシャワーが湯になりきらないうちから胸に噛みつかれ、下半身を揉みしだかれる。
俺の声だけで耳が埋まるように、はじめから大袈裟に喘いでやった。
人に聞かされるのは嫌なはずなのに、結局俺たちもそれしか知らない。
近いうちに引っ越しを考えなくては。

2件のコメント

ジャクソン

一気読みしました!胸焼けなんてとんでもない、一気読みならではの多幸感半端ないです!やっぱ18→23の流れが好きだな…最後25が右オトートで完璧なフィニッシュでした!1番最初から通して御本で読めるの、楽しみにしています!

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うよ

わーー一気読みありがとうございます!!
私も18→23のやつ結構気に入ってます。ちょっと続き書きたい…!
まさかの右でのフィニッシュになるとは自分でも予想外でしたが、そう言っていただけると嬉しいです(*^^*)

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