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今日は絶対しない。
口に出すと悲惨なことになるのがわかっているから、心の奥で固く決意して。
なのにそういう日に限ってこんなことになるのはなぜだ。
「…っは、ぁした、はやいっから、ダメ、って言っただろぉ…」
立ったままで、前も後ろも弟に掌握されて、ユニットバスの押すとへこんでしまいそうな壁に胸を預ける。少しでも冷たさを拾って落ち着きたかった。
大きく息を吐いて吸い込むと、蒸された空気が入ってきて頭がくらくらする。出しっぱなしのシャワーがもったいない。
「だから風呂でしようって。早く終われば問題ないでしょ。」
耳元でそうつぶやいた弟の口がかぱりと開いて、肩を噛んだ。
「ぃっ…うー-…」
そうかもしれない。けれどそう言われて流されて、早く終わったことなんか一度もない。
明日は健康診断なのだ。出発が早いうえ、服を脱ぐから跡をつけられたくないし、そんなことはバレないとわかっていても、昨夜もセックスしましたみたいな体で行きたくない。
長引かせないようにという気遣いなのか、弟の指が前立腺ばかりを狙って撫でた。
「あっ、あ、あう、や、やだって。」
「やなの?」
「やじゃなっ…くない、やだっ。」
まずい、流される。
反対の手がいつもなら焦らしてなかなか触ってくれない陰茎を上へ下へと扱く。だめだ負けそう。だらしない体が恨めしい。
「ほんとに、いや?」
こういう時の弟は悪魔だと思う。俺が絶対こいつに対して弱いことをわかっていて、やわらかい声を使ってくる。ひどい。
答えられないでいると、指が奥まで入ってきた。そのまま押し開くように出ていって、また入って。ちゃんと弱いところを擦りながら。
ぎゅうと下腹が切なくなって射精感がこみ上げる。
「あっ、やば、出そ…。」
息を詰めて腹に力を入れる。くる、と思ったらずるんと指が抜かれて、もう口からほとんど出かかっていたものは根本でぐぐっと握られた。
「---っ」
噴き出しそうだった欲が急に逆流して目がチカチカする。さみしくなって無意識にぱくぱくしてしまった後ろの口に、ずしりと熱い塊りが押し付けられた。
「ほんとにいやなの?」
もう片腕一本で宙づりだ。下で手招きしながら渦巻いているのは愉悦。明日のことを考えるわずかな理性にしがみついているけど、身体は落ちてしまえと主張している。
判断が鈍くなって意識がぐるぐるとまわり始める。見透かしているかのように、弟が頭をほんの少しめり込ませた。
「うっ…!」
それだけで孔の奥がそれを招き入れようと吸い上げるように締まる。
なんとか初志をかきあつめて首をぶんぶん横に振ると、後ろでふー、と息を吐いた弟の空気が変わった。珍しくしつこく抵抗したから飽きてきたのかもしれない。
これはこれで、やばい。
一番太いところで入口をぐぶと広げられ、また全部抜かれる。もう一度、ぐぐと押し広げられて皺が伸びる。窮屈だと思ったら取り上げられる。
甘やかすことが面倒になった弟が、耳たぶをきつく噛んだ。
「兄さん。先っちょだけ。」
さっきまでと打って変わって、声が怒気をはらんでいる。
まずい。俺どこで間違えたんだろう。
耳が痛い。ひりひりするのに、泣きそうなほど気持ちいい。
「さ、先っちょだけ、なら…。」
ちょっと怖くなってつい、そう言ってしまった。意志が弱すぎる。
俺のものを握った手はそのままに、もう片方の手で尻たぶを広げるようにして、弟が頭だけを入れて、浅いところで留まり、出した。尻の穴がギリギリまで広げられ、また解放される。その度にいかないでと名残惜しそうに吸い付いていくのがわかる。そっちばかり可愛がられてと嫉妬して、腹の奥がきゅうきゅう疼いた。欲しいものが与えられているようで全然足りていない。頭が灼けつく。これを続けられたらおかしくなってしまう。
「はい、おしまい。」
突然、出口を塞がれていた陰茎は解放され、入り口だけを圧迫していたものが完全に抜かれた。
沸騰しかけていた頭が耳に入った言葉を拒否した。混乱する。今なんて言った。
「先っちょだけって約束だから。」
まったく収まる気配のないグロテスクな一物を隠そうともせずけろりと弟は言い放った。
体中が不満を申し立ててくる。もっと欲しかったのに。本当は、ちゃんと奥まで入れてもらいたかったのに。意志に反して全身がそれを欲しがって、ぶわりと涙が浮かんだ。
「ご、ごめっ…」
「明日早いんでしょ。」
そう言って体を流そうとシャワーヘッドへと伸びた手を、思い切りつかんだ。体の向きを変えて、向かい合う。
「やだ…。」
「うん。兄さんがいやって言ったから。もうおしまい。」
目線が無機質で怖い。ぼろぼろ涙が零れる。
「そうじゃな…!これ、ほしい…」
重力に逆らって天井を向くそれに手を這わせる。凶悪な硬さと火傷しそうな熱さ。
「先っちょだけ?」
まだ機嫌の悪そうな声にひるみそうになる。だけど、宙づりだった体を底なしの下へ落としてしまう覚悟を決めて、明日の予定から手を、放した。
「ぜんぶ。ぜんぶ入れて…。」
熱く反り返ったものに下腹を寄せる。それだけで中が悦んで悲鳴をあげている。臍の下にそれをこすりつけて、そこから溶けそうになりながら、弟の首に腕をまわした。
「わがままな兄さん。」
呆れたようにそう零した弟が、俺の左足を大きく抱え上げた。ゆるんだ孔が丸見えになって、全身が期待で震える。もうなにがきても受け止める体制だったそこへ、猛ったちんぽを容赦なくぶち込まれて、無駄に何かを考えるという機能は止めた。明日の健康診断のことも放り投げて、噛んでくれと鎖骨を差し出す。
限界を超えて弟を欲しがっていた体はあっという間に落ちて、どろどろに形も残らず溶けた。
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