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毎度思うが恐ろしく間抜けな格好だ。
トイレの壁に手をついて、スラックスと下着を足元に落とし、つるつるの尻を振っている。
呆れて大きくため息をつけば、空っぽの胃が鳴った。
「お腹すいた」
むき出しの尻を無視して背中に頭をあずけると不服そうに兄の口がとがる。
「お前が5分遅れて来るからだろぉ。はやく入れろよ。」
当たりそうで当たっていない俺の下半身に兄が尻をくっつけてくる。
『9階東側トイレ』
と書かれた付箋。就業中だというのにいつでもそれのことしか考えていない兄が俺のパソコンに貼ったもの。連日場所を変え、でもやっていることは同じ。
「知ってると思うけど、うちの部署今死ぬほど忙しいんだよ。」
「わかってるよ。でもしょーがないじゃんやりたいんだよ。なーお願い。今月もちゃんとトップ取るから。」
よくも毎回同じ台詞が言えたものだ。それで本当に営業成績トップを取ってくるものだからたちが悪い。
手首の時計に目をやる。今日も昼飯は食べられそうにない。
「餓死したらもう抱いてやれないからね。」
恨み言だけ言い捨てて。トイレらしく、モノだけ取り出し、無駄に手触りのいい尻をつかんでぶちこんだ。
必死で声を飲み込んでいるがそんなのは俺を煽るためのアピール。時間がないから遠慮なく一番奥までぶつける。肉と汁と激しい呼吸の音を聞いていると、ゴリラの飼育員にでもなった気分だった。
―追記―
不快な疲労でガチガチに固まった体を引きずって帰った。玄関を入ると行儀の悪い兄がシンクの前に立ったままバナナを食べている。
「おーおはえりー。」
スーツも脱がず口をもごもごさせながら片手をあげた姿が蛍光灯で照らされて、昼間トイレで想像した動物が思い起こされた。こちらは兄のおかげで結局昼食を食べそびれ、合間で栄養補助食品を補給したものの消化管の中は上から下まで空っぽだ。心の底から苛々する。
「腹減ってる?食べる?」
目線で怒りが伝わったらしい。半分ほど齧った果物をこちらに向ける。機嫌をうかがうような顔に余計むかついて、その手首をぐっと握って顔を近づけ、口を開けて歯を見せた。
「皮むいて。」
兄があたふたと残り半分を覆っていた黄色い皮をむく。白くて細長い、独特の匂いがするそれを、ぐわと大きく口を開けて兄の指ごと入れた。至近距離で兄の喉が鳴るのが見える。
上顎と舌で強く挟むと繊維に沿ってぐにゃとばらけた果肉が、べっとりと兄の指にまとわりつく。かつえていた粘膜から涌き出た唾液も一緒になすりつけて、指も飲み込むつもりで喉のあたりまで引きずりこんだ。舌の表面のざらつきを確かめさせるようにゆっくり舐めると、兄の表情がどろりと溶ける。
栄養価の高い実を全部飲み込んで、ほとんど泥状になって指に残った分は、人差し指、中指……と順番に咥えてずるりと舐め取った。
「も、もっと…食べ、る?」
兄の目線が俺の口元から離れない。
「もっと食べたいのはそっちだろ。昼もあんなにサカってたのにまた欲しいの?」
スラックスの上から股間を握ると動物みたいな声を出した。唇と唇がつきそうなところまで寄って、濃くて甘い匂いの残る息を吹きかける。うっとりと目を閉じながら兄が口に触れようとしてきたのを、制した。
「兄さんステイ。」
びく、と兄の動きが止まる。ゴリラに『待て』もおかしな気がするが、興奮しているようなのでまぁいい。
肩を押して膝をつかせ、兄の欲しいものを隠しているジッパーを差し出してやった。顔を真っ赤にしてカチャカチャとホックをはずし、スライダーを歯ではさんでおろす。高ぶって震える指で俺の陰茎を取り出し、さっきのバナナを食べるみたいに口を開けて間抜けな顔をしたところで、額を押さえて止めた。
「行儀悪いな。待てって言ったろ。」
半分舌を出して口を開けたまま、悲しそうな目で見上げてくる。もうゴリラだか犬だかよくわからないがいい眺めだ。
鼻先に突きつけたモノに自分の手を沿えてゆっくり扱く。
手の平で握りこんで、皮が動くのを見せつけながら、根本から先へ、また根本へ。
兄は閉じなくなった口の端からとろとろ涎をこぼす。鈴口にぷくと膨れた先走りが重力に逆らえない大きさになってつうと垂れると、必死にべろを伸ばして受け止めた。
「な、おねが、食べひゃい…」
閉じない口のまわりを何度も舐めながら兄がねだる。だがまだやらない。昼飯を食べ損ねた恨みは大きいのだ。
無視してそのまま、どしりと質量を増したものを、浮き出た血管を潰すようにして扱き続ける。
「あー出そう。」
「え、なん、でっ…だめ!」
「出すよ。」
わかりきっている自分のいいところを擦る。先っぽからびゅ、と精液が飛び出し始めた途端、兄が我慢しきれずばくりと食べた。びゅく、びゅく、と断続的に出るものが喉を通っていく。全部飲んで、褒めてと言わんばかりにぱかっと口を開けたから、眉間にしわを寄せて睨んだ。
「食べていいなんて言ってないよね。」
「ごめ…。」
謝りながらの口はまた俺のものを咥えている。
「毎日毎日、孕みもしないのに交尾したいの?」
「したい…だってお前の気持ちい…。」
「動物以下だな。」
ゴリラが交尾するのは繁殖するためだ。
力の抜けきった体を引っ張って立たせ、シンクに手をつかせて服を下ろした。昼も見た、滑らかな丘が蛍光灯を反射する。
兄のことを罵ったが、自分も結局似たようなもの。手になじむ感触を少し揉んだだけですぐ発情して、割れ目をゴリゴリ擦れるくらいにはまた硬くなってしまう。
散々なことを言われたのに兄はさらに熱を上げて尻をひっつけてくる。
「食わせて…」
誘われるままに挿れるのは癪だから、シンクの上にまだ置いてあった次のバナナを取る。皮をむいて、兄の顔の前に出した。
「口開けて。」
蕩けた顔で開けた口に、そのやわらかい果実を押し込みながら、同じはやさで後ろの穴にいきり立ったものを食べさせた。
「ふっんんんんっ…!」
口が閉じそうになってぐにゅ、とバナナがつぶれる。同じように尻の穴がぎゅうと締まって、もぐもぐと食むようにうねる。
「こぼさず食べて。汚い。」
口の横についたつぶれた果肉は指ですくって口に押し込む。口内に指と果物を入れるのに合わせて、その度に屹立を奥に向かって突き入れた。
「んっ、ああん、ひ、ぐ、むぅ、んんっ…!」
喉に詰まってしまわないよう懸命に咀嚼している。おもしろいぐらいに後ろの口も同じ動きをして、昼に急いで交わったのより何倍も気持ちよかった。
ぼた、と果肉がまざった涎が落ちる。
「りょ、りょうほ、ん、むり…んぐ」
「贅沢言うよね。食べたいって言ったの誰。」
涙を浮かべる顔は苦しそうにも見えるが気にしない。
兄の手を取って残りのバナナを持たせる。力を入れたら手の中でつぶれてしまいそうだ。
「ちゃんと食べて。こぼしたら明日はあげない。」
焦った顔で首を振ったのを確認して、両方の手でがっちり腰を掴む。
上の口よりよほど上手にこぼさず食べる下の口を、こっちのほうがえらい子だね、と褒めるように壁をぐりぐりこすってやると、予想通り、握った手で皮ごとバナナをつぶしていた。
あとで掃除しないと、と思いながら弱いところを狙って入れて、無意識に兄がシンクの角にこすり付けていた陰茎も握ってやる。
「あ゛っ?!あ、や、だ、めっ、あ゛ぁー-っ」
大きく喘いだ口からまた白い果肉があふれそうになって、兄はあわてて口に手を当てた。休む暇はやらない。お行儀のいい尻の口にしつこく自分の棒を食わせると、それこそ飲み込むようにぐいぐい巻き込まれてちぎれそうなくらいだった。
鼻水を噴き出しながらなんとか食べ切ろうとするふくらんだ頬を見る。思い出したように腹が鳴った。このままだと夕飯まで食べ損ねるんだろうと気づいて目まいがした。
どれも最高ですね
ありがとうございます!!全部読んでいただけて嬉しいです!!(うよ)