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帰宅すぐ、手の消毒だけしてソファに座りこみ、マスクを取るのもおっくうで背もたれにどっと沈み込んで、まどろんでいた。
意識が上がろうか下がろうか迷ってとろとろと彷徨っているところへ、目の前に人の気配を感じる。ああ弟が帰ってきたのかと思ったが、そのままもう一度眠りの底から引っ張られる方へ身を任せようと、気づいていないふりをした。
鼻から頬へおりていくラインのマスクの隙間から、つ、と指が入ってきて、ふわりとアルコール臭がする。かたい爪が上唇をくすぐった。
触られるとそこからじんわりと意識がはっきりしてきて、起きようかと思ったが、手足はさっきと変わらず重だるくて、力の抜けたまま好きにさせる。
ふにふにと唇を押していた指がゆるい綴じ目に押し入って、前歯をくすぐり、歯列をなぞって奥歯まで進む。歯茎の根元をやわく押されるとじゅわりと唾液がわいた。
仕方なく目を薄く開ける。たまり始めたそれを指に絡ませながら弟が少し笑った顔で立っていた。
「疲れてる?」
「ひょっと。」
「食べていい?」
「いーよ。」
指を入れられたままでちゃんと発音できなくて、でも満足そうだったからいいことにする。もう一度目を閉じると、瞼の上から食まれて、そのままとろとろと目が溶けていって意識はまた底の方へ沈んでいった。
どれも最高ですね
ありがとうございます!!全部読んでいただけて嬉しいです!!(うよ)