初夜、感度3000倍、何も起きない筈がなく……
胸のあたりを撫でた兄さんの手を思わず弾いてしまった。
「いま、なんて言ったの。」
「え、だからごめん、お前の身体、感度3000倍になっちゃっ…た…」
ふざけた言葉が終わる前にはもう背中がかっと熱くなっていた。
『願いを叶える券』がまさか自分のそれだけを叶えるなんて都合のいいものではないだろう。兄さんの願いも等しく叶えられてしまう。
苛立ってビキ、とこめかみの血管が浮き上がるのがわかる。
だがそれ以上に、シーツについた膝がくすぐったいような変な感覚に襲われ、兄さんの言葉が嘘ではないことを突きつけられてしまう。
「ごめんな?責任取るから…だから今夜は、」
起き上がってこようとした俺より大きな身体を押し戻した。
「初夜だから…!兄さんはおとなしくしてて…!」
その触った手のひらさえびりびりと痺れて、身体の変化に頭がついていけない。おとなしくシーツに戻った兄さんが手を伸ばして頬に触れた。
「お前、顔赤っ…かわい…。」
「んっ……さ、わんな…」
優しく頬を撫でられるのも、今はすべてが快感になってしまう。やめさせようと取った手を逆に握り返されて、手の甲から指先へと血管をたどられ、そこから肘へと電気が走って肩が跳ねた。指先を1本ずつ握られ、口に含まれる。
「や、め…!」
唾液を絡ませながら舌の付け根を触らせられて、挑発的な目で刺された。
「お前のちんぽ舐めたい。こうやって。」
今そんなことをされたら大変なことになる。頭を左右に振って、兄さんの口から指を引き抜いた。
「だめ、俺がする…!」
身体を入れていた膝をさらに開いて、バスローブをめくり、そこをさらす。もうすっかり起ちあがったものが機嫌よさそうに揺れていた。先端からとろりと零れる蜜は美味しそうで、大きく開けた口で根元まで一気に咥えた。兄さんの内腿が震える。
「アッ、う……くち、んなか、あっつぃ…!」
舌のざらざらしたところを擦り付けるようにして、竿に這わせる。だけどそこから熱を拾った舌が気持ちよくて口の中が溶けそうな錯覚に襲われてしまった。いつの間にか起き上がった兄さんが両手で俺の頭をつかむ。
「いつもはされる方だから、知らねーかもしんねーけどっ、口の中だって性感帯なんだぜ」
「ん゛ん゛っ―――っ」
長さと大きさのあるものが喉にぬるりと侵入する。口蓋を頭の部分でふにふにと押されると、脳をつつかれているようで視界がぐらついた。舐めるというより、べろを使って擦られているといった感じで押し付けられて、唾液がじゅわと沸いてくる。口の端からそれがこぼれていくのでさえ、口角が落ち着かない。
「あーすっご…お前のべろ気持ちー。」
すっかり見下ろされる位置になってしまって腹立たしい。いつもならどろりと溶けてゆるんでいく赤い目が、だんだん獰猛さを宿し始めていた。
「わり、先、出すわ。」
抵抗しようにも首まで熱を持っていてまったく力が入らない。押し返しているつもりだった両手はいつの間にか兄さんの大腿で下敷きにされている。
射精に向けて頭をつかみ直した兄さんの指が、耳孔をずぶと埋めた。
「――ぐ、んんっ」
世界を遮断されたみたいな錯覚。溜まった唾液がかき回されて泡立つ音が、鼻腔を伝って内側から鼓膜を揺らす。ぐちゃぐちゃと左右で響くその音に煽られて喉が締まった。いっそ吐くほど奥まで突っ込んでくれた方が苦しさにすがってしまえるのに、下手に手加減されているせいで、気持ちよさばかりがぐるぐる口の中をまわる。奥歯の生え際がぐずぐずと疼いてたまらない。
「ぅっ―――」
兄さんが低く唸って口のものが質量を増す。ぐっと耳の奥に力をかけられ、抜きざまに口内いっぱいに精液をかけられた。
「はーっ、はーっ、ぇほっ」
最後まで白濁を吐き出しながら太いものが出ていくと、やっと存分に空気が吸えると口が開く。出されたものが唾液と混ざって垂れた。酸素が急に入ってきて頭がふわふわする。
「えっろ…。」
両手で俺の顔を包んだ兄さんの顔は完全に興奮しきっている。出されたものを飲み込みたくなくて、口が閉じられない。
「おっまえさ、そんな顔、おにーちゃんのいないとこでしちゃだめよ?」
楽しそうで心底ムカつく。鼻をつままれて手で口を塞がれ飲まされる。流れ込んだところから内臓が灼けついて、変な薬でも飲んだみたいに体が熱くなった。
兄さんが満足そうに俺の体を押す。力が入らずそのまま沈んで、背中をシーツにくすぐられる。
「ほんっと最悪この身体…!」
「ほら、楽しみにしてた初夜だぜ。」
コントロールのきかない身体の上に兄さんが乗って、今度はこちらのバスローブをはだけた。怒り狂って真上を向いたものに割れ目を宛がわれる。本当なら、ちゃんとキスしてどろどろに兄さんが溶けるまで前戯をして、それからゆっくりするつもりだったのに。
ほんの少し入口で吸いつかれただけで腰がかくんと動く。
「う、」
「あ、はい、るっ…!」
準備で十分に解されていたところに飲み込まれる。頭が狭いところをくぐった瞬間、下腹にぎゅうと力が入ってまた腰が勝手に動いた。押しとどめるすべもなく、あっという間に吐精してしまう。
「あっえっ…もしかしてイっ」
「うるさ…!ぐ、んうっ」
「そりゃそうだよな、感度3000倍で俺の中入ったら秒でイくわ、名器だもん。」
「も、だまっ…てっ…うあ!」
出しても全く萎えないのをいいことに、ずるんと根元まで食べられてまた強制的な射精感に襲われる。達して間もない尿道を容赦なく子種が通って噴き上げた。
「おわっ…あっつ…!」
「―――っううっ」
びくびくと跳ね続ける下腹が止まらない。続けざまに吐き出してなお、やわらかい肉に包まれたものは痛いほど起ちあがったまま。少しでも落ち着こうと息を吐くが、荒々しい動物みたいな音しか出ない。
「お詫びに兄ちゃんがいくらでも搾り取ってやるからな。」
「ぁあっ…まっ、やめっ…!」
一度腰を浮かせてからまた深々と落とした兄さんの内壁にぎゅうとねじり上げられて、下半身が悲鳴を上げる。だめだ、刺激が強すぎる。膀胱の下あたりに嫌な感じが溜まる。射精前の感覚とは違う、何かが押し出されそうな。
「すっご…お前の形、わかる…!」
ぎちぎちにハメられたまま、ぐりぐりとまわすようにされて、とうとう脊髄を伝って頭が弾けた。
「やだ、うご、くなっ…ぁああっ―――」
情けない声と、機械仕掛けのおもちゃみたいに浮き上がる腰。ぷしゃりと兄さんの中に勢いよくかけたものがもう何なのかわからない。
「また出た?ぁはっ…やっばいね」
「だれのっ、せい、だと、あっや、もうっ…」
兄さんも気持ちいいのか、そのまま何度か上下に擦られて、また水分を噴き上げるとようやく抜いてくれた。
視界がチカチカして兄さんの顔が見えない。目の端にたまっていた水がぽろりと流れる。
もはや自分の身体なのに完全に制御不能だった。状態がわからない。頭のてっぺんからつま先まで、拍動に合わせてびくりびくりと跳ね続けているような感覚だけ。
必死で息をついていると、細くたらたらとまだ何か吐き続けるものを撫でた兄さんの手が、会陰をたどって後ろの孔に触った。
「せっかくの初夜だからさ、お前もう動けねーし、交代。一緒に気持ちよくなろうな。」
ふざけんな、やめてくれ。
言いたいのに口が動かせない。声帯を震わせたらたぶん、おかしな声が出てしまう。
目線だけが唯一言うことを聞いて、ありったけの怒りを込めて兄さんを睨む。
「その顔だめだって。いじめたくなっちゃうわ。」
最悪だ。何もかもが裏目に出る。
長い指がなにかぬめりをまとって、尻の中に侵入してきた。息が詰まる。
「い、やだっ…て…!」
「あれ、こっち初めてだっけ?じゃあ正真正銘、初夜じゃん。」
冗談じゃない。
叶ってしまった変な願いのせいなのか、完全に身体が弛緩してしまっているからなのか、多少の違和感はあるものの痛みも苦しさもまったく感じられない。遠慮のない指は具合を確かめるようにゆっくり、腹の方、背中の方、と少しずつ押しながら奥へと進んだ。
「ふっ…んん、う、うっ……」
「痛くない?」
返事をしたら負けな気がして無視していると、あっという間にもう1本の指を入れられる。ずぶと入り込んで、今度は広げるように動かされる。嫌だと思いたいのに高められすぎた身体はまったく嫌がってくれない。
「俺もいれる方初めてだからさ、ゆっくりするけど、この辺か?」
そんな風にしてくれなくていい。多少痛いぐらいの方が正気に戻れそうなのに、慎重に動いていた兄さんの指が、前立腺を探り当ててしまう。
「ひうっ…に、さん、やっ…」
やめろという言葉は途切れて、どう聞いても先をねだっているようにしか聞こえない。
「ここ、お前がいつも触るとこだろ?」
「ああっ……も、抜けっ…くっそ…」
暴かれてしまったところは逃がしてもらえない。同じところをそろえた指で何度も押さえられるとその器官が作り変えられるようで怖くなった。
「やっ…だ、にいさっ……ひ、ううっ」
「いつも俺の中こんななってんの?すっご、勝手に動いてる。」
感心したように好奇心丸出しで弄ぶのはやめてほしい。強く弱くもまれて、そうかと思えば2本の指で挟むようにされて、その度にもっと奥の方が熱いような、切ないような、初めての感覚に翻弄される。
「も、やめ、ァっ…おねが、」
シーツを握る手も弱弱しい。身をよじるとシーツがこすれて背中から責め立てられ、中は兄さんの指で溶かされて、どこにも逃げ道がない。直腸は、勝手に動くと揶揄されたまさにその通りで、意識を逸らそうとすればするほど、切り離された別の生き物みたいにぐねぐねとうねって指を奥へ誘い込もうとしている。
「ほんとごめんな?まさかお前こんなに可愛くなっちゃうとか思わなくてさ。責任、取らせて。」
指が抜かれると後を追うように穴が窄まった。
応えるようにぴたりとあてられた、兄さんのもの。さっき口の中の粘膜を擦った熱いものがそこに入ってくることを想像して尾てい骨が期待でざわつく。
「ちから、抜いとけよ…っ」
兄さんが手で陰茎を固定して入口に押し込んでくる。思っていたよりもずっと圧迫感が大きくて息が吸えない。
身体に見合ったサイズのものは入口をくぐるのも一苦労だ。一気に貫いてくれないもどかしさが腰にまとわりついて、気づかないうちに押し付けるように兄さんの股座に下半身を寄せていた。
ず、ず、と入ってくると内臓が兄さんの形に広げられる。お腹が焼き切れそうだ。
「ぐっ…う…」
「もう、ちょっと…!」
そもそも感度3000倍などと人の身体で遊んでおいて、気を遣ってる風に挿入するのはやめてほしい。どこまで入ってくるのかわからない怖さと、すでに広げられたところからじりじり溶かされるのとで臍から下が馬鹿になる。
「あ、あ、あっ、うぁっ…んん!」
ずん、と奥の方まで重くなって、兄さんが上でふうと息を吐いた。どく、どく、と脈打っているのが中ではっきりとわかっていたたまれない。
「やっぱ兄弟だから?お前も名器なんじゃね?」
そう言って兄さんが腰骨をつかんだ。つかまれた骨がびっくりして中が締まる。それを無理やり引きはがすように、中を埋めたものが抜かれてしまう。
「んんんああっ……」
衝撃でまた精液が出たような気がしたのに何も出ていなかった。擦れた壁が燃えたようになってこらえようのない愉悦に支配される。もっと入れて、もう一回擦って、奥を突いてほしい。頭の中がそれしか考えられなくなって、懸命に目線が兄さんの顔を探す。
「締めす、ぎっ…ちょ、まてって…!」
兄さんが苦しそうに鳩尾に額をぐりぐりとひっつけてくる。乗った頭の重みと、肌を這う柔らかい髪の感触がまた下腹部を刺激した。
「ううっ、ん、あたま、はなしっ」
「わりーんだけど、ちょいケツ緩めて。俺3000倍じゃないのにすぐ出そ…!」
見えない表情の奥から、歯を食いしばる音が聞こえる。兄さんは耐えるように頭を左右に振りながら、つかんでいた腰に、ほとんど抜けかかっていたものを思い切りたたきつけた。
「うあっ…だす、なっ――あっ」
絡みついた内壁が、中で陰茎の弾けそうな気配を敏感に拾う。先の方がぶくりと膨らんで、あ、と思ったときにはべしゃりと奥へかけられていた。
出すなって言ったのに。
最奥が熱くてたまらない。意識がそこにしかなくなって、重力に従って流れるのさえ感じ取れてしまう。
とろりと、出されたものが萎えないままのものに絡んで、また引き抜かれる。
「んんん――っ」
押されても引かれても、そのたびに視界が点滅して、ずっと絶頂感に捕まえられたまま。1回突かれるごとに腸壁が震え上がって、もう何も出せない自分のものが、それでもなにか吐き出そうと鈴口をぱくぱくさせ、何かわからない体液を申し訳程度に零した。
「やっばい気持ちいい……お前こっちも素質あるじゃんっ…!」
ぐちゃぐちゃと音を立てて奥をかき回される。素質うんぬんはともかく今日のこれは3000倍のせいであることは明らかなのに、それを伝えるすべがもうない。
「ふ、んん、まわ、すのやめっ…てっ…あああっ」
「だーめ、これよすぎるからっ…う、また出るっ…!」
「っ、アあ、だすなって言ってっ…ンう――っ!」
気持ちとはかけ離れたところで、またかけてもらえると悦ぶ密壺は兄さんのものを搾り取ろうとピッタリ茎に引っ付いてうねる。
もうイくことしか頭も身体も機能していない。また中にあったかい精液をぶちまけられて、ごくんと飲み込むみたいに下腹が上下した。
「あ――たまんね……!またいつか、こっちもさせろよ、なっ」
頭を上げた兄さんが意地の悪い顔で笑って、絶頂感で高く持ち上がったままの胸の突起に吸い付く。
強烈な刺激がまた下半身の肉をうごめかす。
「ああ、もっ……だぁ、めっ…!」
「ほんとにだめって思ってないだろ」
信じられないくらい舌足らずな言葉が出て、ますます兄さんを喜ばせただけ。反対側の尖りは指でつままれた。同時に、硬さも大きさも衰えないものを、また孔に出し入れされると、頭の中で何かがはずれたような変な音がして、両足を兄さんの腰に巻き付け、めいっぱい自分に引きつけた。
「あああっ……またい、くっ……!」
脳天まで貫かれたように背筋がびしりと伸びて、止められない尻の中が長く長く兄さんのものを締め続け、そこで意識が、途切れた。
ハワイに着くまでは、まったく思い描いたとおりの結婚式で、あとは初夜をやり遂げれば完璧だったのに。
最後の大事なところを全部持っていかれてしまったことを腹立たしく思いながら、沈む意識の端で、もう一枚あったような気がする『願いを叶える券』を、もっと穏やかな願いに使うつもりだったそれを、何に使うか密かに決めた。
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