「まて、はなせってもう」
「ぃひれすよ」
「その、まま、喋るなっ」
嫌だ離せと口だけは言うがローは小ぶりな桃色の頭を抱え込んだまま離すことができなかった。手の力を緩めれば、今にも腰が年下の男の喉をついてしまいそうで。だというのに呑気な薄い唇はローの陰茎を含んだまま、唾液をこぼさないようすすり上げながら話すものだからたまらない。
ローとこんなことになるまで、他人の陰部になんか口をつけたことはなかっただろうに。意外にもコビーが口淫を気に入ってしまったようで、隙あらば咥えられるようになったのはローにとっては計算外だった。
「出していいですよって言ってます」
一度口を離し、達ち上がったものを手であやしながらコビーは八つ年上のローを見上げた。湿った幹の表面が空気に触れて冷たく、眉が寄って顔が歪む。
「おれがやなんだよ」
「ぼくがいいんだから、いいじゃないですか」
そしてまた、止める間もなく「あ」の形に開いた粘膜が亀頭から根本までをぱっくりと覆ってしまった。再びあたたかい泥濘に沈んでローの腰が跳ねる。
「うぁ、吸うな、んんんっ」
いつも明るく溌溂とした声でローの名前を呼ぶ口が、行儀の悪い音を立てる。喉の奥で鈴口を絞るように締め付けて、きっと青臭い匂いが鼻に抜けていることだろう。唾液にまみれた指が、下生えをくすぐりながら根元を囲って擦りたてている。反対にローの手に絡むコビーの髪はさらさらとしていて、その湿度の違いに涙が滲んだ。コビーにこれをされるとき、されている側なのに、こちらがひどくいけないことをしている気になって、ますます興奮を煽られるのがいただけない。
「ローさん」
たしなめるように呼ばれて視線をやる。半開きの口から出された舌の上に、まるい亀頭が乗せられていた。裏側に触れている、舌のざらつき。
「やめろっ」
見せつけるように竿を扱かれ、じゅうっと吸い付かれた。そんな下品なことを。頭がくらくらする。同じことを確かに先日やってやった。そう、これを教えたのはまぎれもない自分だ。覚えのいい生徒は、ローがやったのと同じように反対の手ではち切れそうな袋を転がし、しかしローとは似ても似つかない可愛らしい顔で笑んだ。
「出していいです」
視覚的な刺激がいちばんキくからとかなんとか、高説を垂れた数日前の自分を殴りたい気分だった。もう一度、ローさん、と優しく呼ばれて、本格的に泣きが入ったのを咎めるように、また先っぽに吸い付かれ、玉を指でつままれる。くびれの裏側を舌でひと撫でされる。
「だめ、だっ、でる、で、でるでる……んううっ」
暴れそうになった屹立はしっかりと掴まれコビーの舌の上に固定されたまま、びくりと震えることも叶わなかった。かわりに背中が反りかえる。どく、どく、と耳の中で響く特大の拍動につられて内腿が動いた。ふうふうと息を吐きながら背中をまっすぐにすると重力に従って涙がこぼれ、顔を戻すと白く汚されたピンク色の口腔が開いたまま待ち構えていて、さらに目じりが潤んだ。上目で年上の視線を捉えたコビーはゆっくりと舌をしまって、上と下の唇を閉じて、そして口蓋を動かした。
「やめ、やめろばかっ」
制止を求めた手は喉に触れ、嚥下の動きを指先でまざまざと感じてしまう。硬い喉ぼとけがぐりと上がって、下がる。食道にローの吐き出した白濁を送ったその動きは猛烈な熱でもってローの顔色を赤く染めた。
「とても興奮したので、おかえししようと思ったんですけど」
うまくできましたか、とまなじりを下げた可愛い男は、鈴口に残った小さなしずく玉をぺろりと舐め取った。頭から湯気を噴きそうになるたび、二度とおかしな真似はよそうと思うのに、この年下の顔が自分の手管に流され快感に溶ける様が見たくて、またやってしまうだろう。そしてまた、仕返しでなく、おかえしで。
身長も性格もまったくの凸凹なのに、そんなところだけ同じ穴の狢。引きずり込んだのは自分だった。
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2023.11
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