コビロ24×32

わざわざ眼鏡をかけてコビーはつぶさにペニスを観察した。
口淫をさせてほしい、年下の恋人にそう請われたとき、彼が正しく「フェラチオ」と言ったことにローは多少動揺した。よく考えれば年頃もすぎた、もはや青年なのだ、それくらい知っていておかしくはない。時々ローが実践してみせているのだから、なおさら。
八つも下のオトコが自分の身体に興味を持つのは喜ばしいこと。素直な笑みに挑発を乗せて、ローは青年を手招いた。
浅く腰かけ、開いた股の間に、桃色の頭が座り込む。失礼します、だなんて言って、カブトムシでも見るような目つきでボトムを開かれる。腰を上げてやると遠慮なく太ももまで、下着ごと。積極的でなによりだ。
期待でわずかに首をもたげた男の象徴を、コビーはそっと手に乗せた。
そして眼鏡をかけ、目線以外の動きを止めた。輪郭を撫でるようにゆっくりと時間をかけて、存在を確かめていた。
じっと見られるにつれ、ローの頭には一抹の不安と疑問が浮かび始めた。
はたして口淫はこういう手順であったか。
まだ見られている。意識がそこに留まると血液が溜まって、亀頭が丸みを増し、幹が力を持ち、青年の手の中で、どこに出しても恥ずかしくない、形よいペニスが育ち上がった。
「ローさんは本当にかっこいいですね」
手の平を離れて宙を向いた姿にコビーは語りかけ、根元にそっと手を添えた。かつての少年の面影を見せて。
「いただきます」
今、なんて?
濡れた唇が開いて健康的な歯並びが見えた途端、ローはこの承諾を激しく後悔した。壮絶な背徳が産毛をさか立てる。悲鳴を上げそうになった口を手で塞いだ。清廉潔白で一点の曇りもない海兵の中に、自分のものが。薄いピンク色をした口腔の粘膜がペニスを包む。じゅるり、と吸い込まれてちゅるちゅる啜られると泣いてしまいそうになった。
「まっ、まっ、てぅ、んんんっっ」
青年は正しくローがコビーを追い詰める手順に倣った。薄い舌で幹を扱かれる。眩暈がする。だめだ、出てしまう。このままでは、自分の出したものが、病を知らない内臓へ。下って行ってしまう。嫌だ嫌だと思うほどに背中が戦慄く。息を吸っているか吐いているかもわからず、ただ制止したくて目で訴えた。絡んだコバルトブルーはますます丸く開いて輝きを帯びた。透き通る青天にうつる浅ましい自分の顔。
恐れて引いた腰はいつの間にか掴まれていてどこにも行けない。透明な涎が竿をつたって会陰に流れていく。ああ拭いてやらなくちゃ。ぺっ、て、させなくては。
ひどく混乱していた。そのうちに青年の口はそれを咀嚼して飲み込むような動きをみせた。
「ひっ――――ぃ」
亀頭が揉まれて、先っぽから少し飛び出た気がする。舐めとられている。やめてくれ、やめて、きたない。精一杯首を横に振ると太腿をさすられた。泣く子を宥めるように。その手がするりと股座へもぐって、刹那、びりびりと背中が破れる衝撃が。
「あ……――――っ!」
膨れ上がった袋の下、やわくまるいところを少しの気遣いもなく押されていた。続けて、二度、三度。あわせてペニスが咽頭でもみくちゃにされる。ほとんど絶叫のような声を上げて、ローは青年に腰を差し出してしまった。ちかちかと視界に星がはじけ飛ぶ。
ただ腰かけていただけなのに、全速力で走ったようだった。ぜえぜえと肩を上下させているのは自分だけで、目の前の無邪気はとっくに浴びた熱量を飲み下してしまった。
「き、たねぇっ……」
「こんな味なんですね」
感心するな、覚えるな、そしてもう二度とやるな。ひとつも声にはならず、力の入らなくなった両足がさらに開かれる。眩暈がひどくなる。やめろ、よせ、抵抗のすべては務めを果たしたペニスとともに青年の口にまた飲み込まれてしまう。
「ぁあっ、や、もうやめ、っっやめろっ」
おかわりです、と咥えたままの声帯が震えて、ローは心底ぞっとした。青年にとってペニスはカブトムシの角でなく、しっかりと性器であった。

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